ジェームス・フォーリーの斬首映像について、偽物説が出たとは知りませんでした。
私が見た斬首映像はスチール写真で、斬首の前後の場面だけです。切断中の映像がないのは少し疑問でした。イスラム武装勢力にとって、そういう映像を公開することは、成果を世界に示すことであり、欠かせないからです。斬首そのものの映像が存在するなら、その内容を確認しなければならないでしょう。
しかし、首を切る時によい映像が撮れなかった場合、ISILは、その部分を公開しないでしょう。うまく首を切れず、手間取った印象の映像しか撮影できなかった場合、よい宣伝にならないので、あえてその部分を公開はしません。
この斬首では、立ったままでは首を切れず、フォーリーをうつ伏せにして、首を切ったようです。
また、偽物の映像を公開することに、何の意味があるかが理解できません。テロ組織に特殊撮影やメイクの技術があるとも思えません。
斬首映像と過去のフォーリー氏の写真とでは、顔立ちが違うという印象は感じていました。しかし、テレビ局が使うプロ用カメラと、市販品の違い、撮影時の光線の違いから、見え方が違うことはあり得ます。斬首映像にはフォーリーの声も録音されていますから、それで本人確認はとれたろうと思います。別の映像では、耳たぶが同じ角度で見えるのですが、形は一致しているように見えました。
地面に横たわるフォーリーの背中の上に彼の首が置かれた映像について、背中に血がほとんどないことは根拠にはなりません。うつ伏せにして首を切った場合は、そうなりますから。
今回、かなり切れ味の悪いナイフを使ったようです。唯一見ることができた斬首のビデオ動画は、首の前面でナイフを左右に動かしています。頸動脈は両側面にあり、映像の位置を切っても皮下の血管しか切れず、その下は気管なので、大量には出血しません。
処刑人がイギリス訛りという指摘もありますが、イギリスが音声分析により、犯人がイギリス人のテロ容疑者とほぼ特定したとの報道があります(関連記事はこちら) 。ナイフが光らないから偽物という指摘には、軍用ナイフは光らないよう処理がされているものだと答えられます。
首を切断するビデオ動画を見ていない段階での結論ですが、偽物と断定できる証拠はないと考えます。