作戦要務令
 「作戦要務例」は旧日本陸軍の、師団以下の部隊を指揮するための戦術要諦としてまとめられたもので、「統帥綱領」「統帥参考」と共にその3大兵書です。

 統帥綱領の場合と同じく、この本をビジネスに応用しようとしても、あまり意味はありません。むしろ、統帥綱領の方がより抽象的なだけ利用しやすいでしょう。作戦要務令では命令文の書き方、時刻や距離の記述方法といった詳細な規則まで書き込まれており、ビジネスには応用できない部分があります。作戦要務令にはいまでも使える戦術が含まれています。たとえば、「指揮官は一度敵と接触するや、昼夜を問わず之を確保し、且つその状況を捜索する責任を有す」(第三篇「情報」 第一章「捜索」)は、現代戦においても共通しています。偵察隊や小部隊によって敵を視認し、砲爆撃を誘導して敵を消耗させ、最終的に味方が前進して敵地を占領するという手順を踏みます。本書は、こうした分析ができる人が読んで、はじめて役に立つと思います。やはり、旧軍を研究する時に読むべき本です。

 また、その長所と欠点も統帥綱領の場合と同じです。完璧を追求した結果、実行不可能なものになった感があるのです。これらの二書は壮大な「べからず集」のようなもので、読む者を見えない鎖で縛ります。さらに、捕虜の取り扱いについては、諜報の一環として緊要事項について尋問しろとしか書いておらず、ジュネーブ条約に則った捕虜取り扱いについては触れていません。

 やはり、この本は旧日本陸軍を研究するために読む本であり、ビジネスの参考にはならないと考えます。ここで取りあげたのも代表的な本だからで、誰もが読むべき本とは考えていません。(2007.1.21)

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