第二次世界大戦の起源
 第二次世界大戦が勃発するまでの過程をテーマとした本として名著とされている本です。著者のA・J・P・テイラーはイギリスの歴史学者で、本書は発売されると大反響を呼びました。しかし、今では古書としてか手に入らないようで、非常に残念です。

 私がこの本の存在を知ったのは、先に外交ゲームとして紹介した「第二次世界大戦の外交戦」の筆頭の参考書であったからです。その邦訳本があることを知り、買い求めたのでした。それには第二次世界大戦に対する関心がありました。なぜ、日本が先の大戦を起こし、また敗北したのかを知りたかったのです。しかし、この本はヨーロッパ戦線に関することだけを取りあげており、とりわけ、ドイツの対外政策と英仏の対独政策について論じており、そういう意味では私の関心に応えるものではありませんでした。

 その上、この本がそれまでの第二次世界大戦の起源に関する論争に真っ向から挑んだことも、私はまったく知りませんでした。それまで根拠とみなされてきたヒトラーの侵攻政策を否定し、そのために大変な議論を呼び起こしたのです。その議論については「ハエとハエとり壺」に書かれていると訳者は紹介していますが、私はこの本は読んだことはありません。

 「第二次世界大戦の起源」はヒトラーの侵略政策に対する評価を論じ、そこから英仏(特に英)の対独政策の妥当性を論じます。そのため、当時のヨーロッパについて特に詳しい知識が必要です。高校の教科書では、第1次大戦の結果、ドイツにナチス党が台頭し、ポーランドに侵攻したことくらいしか学びませんが、この程度の知識では本書は理解できません。私も最初に読んだ時は自分が知っている開戦に至る歴史と、ヨーロッパでのそれにかなりの格差を感じました。しかし、この本を読んで第2次大戦が特別な戦争ではなく、ヨーロッパの歴史の延長として存在したのだということを理解しました。この理解は、私が若すぎてこの本を十分に理解できなかったことを意味しています。

 テロリズムが戦争の眼目となった時代に、国家対国家の戦争を研究する気が起こらない人がいるかも知れませんが、第1次大戦を含めたふたつの世界戦争を理解しないと、現在の国際秩序の手法について理解することはできません。なぜ、国際法が現在のような形で整備されてきたのか、それらを守るべき理由は何なのか。それを理解するには近代の戦争の歴史を知る必要があります。

 この本を最初に読んでからすでにかなりの年月が経ちました。そろそろ、またこの本を読み返してみる時だと思っています。(2007.1.18)

Copyright 2006 Akishige TanCopyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.aka all rights reserved.