多数の民間人を殺傷したカナ空爆はイスラエル軍が「建物を狙ったのではない」と認めているように、誤爆と言うべきです。
イスラエル軍は建物の近くからミサイルが発射されたのを確認したので空爆したと言っています。イスラエルが公開した無人偵察機が撮影したらしい映像からすると、ミサイルがほとんど同じ場所から発射されていることから考えて、車載のカチューシャ・ロケットが写っているように見えます。もしそうなら、ミサイル・ランチャーは発射後移動してその場から消えたはずです。そこで、空爆がミサイルの発射後、どれくらい時間が経って行われたのかが問題となります。ランチャーが移動するに十分な時間の後に爆撃したのなら、ランチャーを破壊しようもないので、空爆の正当性は成り立ちません。そこで、ミサイルが発射された時刻を調べてみたのですが、そこまで書いた記事は今のところ見つかっていません。ビデオ映像の中に撮影時刻が記録されている可能性はありますが、今のところ確認できていません。ビデオ映像からすると、ミサイルの発射が確認されたのは夜間です。イスラエルは即刻、爆撃に出たらしく、午前1時に敢行しました。目視が利かない夜間爆撃だったことが誤爆につながったのではないかと思います。事件が起きた夜、レバノンは概ね天気はよいのですが、月は半月に満たなく、目視は利きにくかったと思われます。3階建ての建物がランチャーの場所を見つけるランドマークとして使われた可能性も否定できません。ランドマークにするつもりが、皮肉にもそこに爆弾を落としてしまったのかも知れないのです。
ミサイルを発射したランチャーを破壊した時に、近くにいた民間人が巻き添えをくった場合、法律上は残念ながらやむを得ないという判断になるのですが、今回の空爆では近くにある建物を“誤爆”しています。ワシントン・ポストによれば、使用された爆弾は残骸から見つかった爆弾の破片に書かれていた文字から「BSU-37/Bを搭載したMK-84」と推定されます(イスラエル軍は今のところ攻撃手段の情報を開示していません)。MK-84はポピュラーな爆弾で、自由落下させるタイプの爆弾であり、爆弾自体には誘導装置はないため、航空機の能力で命中精度が決まります。搭載されている爆薬の重量は約428.6kgです。BSU-37/Bは「Bomb Stabilization Units」の略で、どういう装置か確認できませんでした。しかし、型番が近いBSU-50/Bと同じ機能なら、パラシュートのような形で爆弾の落下を遅らせる装置です。爆弾がゆっくり落ちるので、低空爆撃でも機体が損傷せずにすむのが利点です。なんにせよ、爆撃地点は村の中ですから、もっと精密に爆撃できる方法が考えられなかったかという気がします。
爆撃が行われたあと、午前6時30分頃に救援に行こうとした赤十字社のドライバーによれば、イスラエル軍の砲撃のために、町に入るのを3回阻止されたといいます。もともと、イスラエル軍は戦闘地域にいる民間人の被害については大して注意を払っておらず、誤爆と言っても十分な注意をしたのに起きたという話ではありません。
イスラエルは48時間の停戦後、直ちに地上戦を再開すると言っています。まさに定石通りの展開になりつつあります。
(どろさんとmyu5さんからの投稿で、BSU-37/BはBSU-84/Bのようなレーザー誘導爆撃用の部品である可能性の方が高いことが分かりました。イスラエル軍は精密爆撃を試みたものの失敗したのが真相と考えられます)