日本のタンカーがシージャック

2007.10.30



 28日、アフリカ東部ソマリアの近海で、日本のタンカーが海賊に乗っ取られました。乗っ取られた場所は8カイリ沖(約14.8km)です。この船の国籍は日本籍ですが、乗員に日本人はいないようです。まだ、犯人グループの要求は分かっていませんが、アルカイダとの報道はありません。

 おそらく、この事件は現地の海賊グループの犯行でしょう。前にもこのサイトでソマリアの海賊が起こした事件を取り上げました(記事はここ)。これに似た事件と考えられます。

 アルカイダが海上阻止活動や洋上給油を攻撃するとすれば、このように遠洋を航行できる船を乗っ取って、爆薬を積み込み、タンカーに体当たりする方法が考えられます。しかし、この方法も成功の見込みは薄いのです。船舶と連絡が取れなくなれば、すぐに捜索が開始されます。船舶は速度が遅いので、航空機のように短時間で攻撃を実行できません。テロリストが首尾よく攻撃目標を見つける前に発見され、意図を阻止される危険が高いのです。

 石破防衛大臣は洋上給油中はテロ攻撃を受けやすいと主張していますが、これは明らかに誤りです。補給艦には、将来的に20mmガトリング砲とレーダー照準機能を組み合わせた「ファランクス」を搭載することが検討されていますが、現段階では武装は有しません。だから、補給艦には護衛艦が随行しています。護衛艦がいれば、非武装の船舶がテロ攻撃などできません。補給艦がファランクスを搭載した場合も同じです。

 今回の海賊事件で分かるように、この種の組織は海岸から遠くで活動する能力を持たないのです。そのことをよく覚えておくことです。

 洋上給油に関しては、あまりにも神経質で非現実的な主張が多すぎます。石破大臣が、インド洋への派遣で3人が殉職していることを繰り返して主張するのも、その一つです。3人の死因はそれぞれ、入港中の護衛艦内で心停止、ドバイ市内での交通事故、洋上の護衛艦内で死亡(自殺の可能性あり)であり、洋上給油という任務に起因はしていません。この程度のことは、海外で活動する日本企業でも起こっていることです。軍人の死をありがたがりすぎるのは、戦争を見る目を曇らせるものです。

 国会や国内メディアは、洋上給油の問題を直視せず、本質的な問題からずれたところで議論を繰り返しています。昨日行われた守屋武昌前防衛事務次官の証人喚問に至っては、レベルが低すぎる話です。どうして毎回、こうなのでしょう。湾岸戦争時にも同種のずれを感じましたが、今回はもっと酷い感じがします。

 話は変わりますが、先日報じられた原潜ハンプトンが原子炉の定期検査を怠った事件の続報を紹介しておきます。艦長のマイケル・ポートランド中佐(Cmdr. Michael Portland)が解任されました。


ミニ・アンケート実施中

無料アクセス解析

Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.