仲間割れで乗っ取り犯3人が死亡

2008.10.1



 military.comによると、輸送船ファイナ号を乗っ取った海賊が、29日夜間に仲間割れを起こし、海賊3人が死亡しました。海賊の強硬派と穏健派が今後の対応について意見が衝突したのです。

 東アフリカ船員援助計画(the East African Seafarers' Assistance Programme)によると、海賊の強硬派は穏健派の船を解放するという主張に同意せず、撃ち合いになりました。海賊は猜疑心に陥っており、船内は高い緊張状態にあります。東アフリカ船員援助計画の広報官は、海軍の艦船を引き揚げ、交渉の道筋をつけるべきだと主張しています。米海軍はファイナ号にヘリコプターを飛ばし、艦船を2kmの位置に置いて監視しています。米軍は33両のT-72戦車などの武器がソマリアのアルカイダ系組織に渡るのを恐れています。

 死んだ3人が強硬派と穏健派のどちらかは記事には書かれていません。海賊が全部で何人いるのかも依然として不明です。先の広報官が言うとおり、米露海軍による圧力が銃撃戦の原因なのは間違いがないでしょう。このご時世ですから、海賊もロシア海軍の艦艇が向かっているのは知っているはずです。当然、その艦艇には特殊部隊が乗り込んでおり、突入作戦を練っています。ロシアはウクライナの船を助けることで、元共和国が自分から離れていくのを食い止めたいでしょう。米海軍のヘリコプターが収集した情報はロシア海軍に渡されており、作戦検討の材料とされているはずです。アメリカとしては、対テロ戦の一環として、ロシアとの協調路線は崩せないのです。海賊をテロリストに分類するのは無茶ですが、この際、それにこだわってはいられません。ロシア軍が人質の安全を顧みずに強攻策を採った事例は、ベスランの学校人質事件を除いてもいくつもあります。当然、今回も同じ手で来ると海賊たちは考えるでしょう。しかし、今回の記事で、積荷の中にある弾薬の中に、グレネードランチャーが大量にあることが分かりました。強硬派は特殊部隊が接近したら、これで攻撃すればよいと考えたのかも知れません。そこで、話し合いが決裂して銃撃戦になったと見ることができます。

 ロシア海軍は船の図面、米海軍と連絡が取れている船員からの情報などを頼りに、強行突入を模索しているはずです。しかし、強硬突入は修羅場になるでしょう。海賊が弾薬に放火すれば、一気に火災が広がり、最悪の事態が待っています。それを防ぐ方法があるかどうかは、船内の情報がどれだけ収拾できるか、具体策を見つけ出せるかにかかっています。仲間割れが起きているのなら、ロシア海軍艦の姿を見たら、海賊は士気を喪失して逃げ出すかも知れません。でも、最悪の事態をもたらすかも知れません。それは現場にいないと判断できないでしょう。あるいは現場にいても分からないことかも知れません。


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