上官殺し事件の情報公開は不十分

2008.10.16



 military.comによれば、9月19日の記事で紹介した、自分の上官2人(ダリス・J・ドーソン2等軍曹、ウェズレー・R・ダルビン3等軍曹)を殺害した事件の詳細が報じられました。容疑者の氏名は、米陸軍のジョセフ・ボジセヴィッチ3等軍曹(Sgt. Joseph Bozicevich)と発表されました。犯行の理由は2人から叱責されるのに耐えられなかったためでした。

 凶器は私が予想した拳銃ではなく、ライフル銃だったと記事に書かれています。新事実は容疑者の氏名と動機、武器だけで、その後はPTSDの説明になっています。多分、過去記事からの引用でしょう。なぜ、記事の後半がPTSDの話題になるのかは、ちょっと根拠が不明です。前回の記事で、私は可能性としてPTSDを原因に挙げましたが、ボジセヴィッチ3等軍曹がPTSDだったという証拠はなく、ドーソンの義母が、息子が部下がすぐ発砲するので不安だと述べたことを、再び紹介しているだけです。事件の詳細は依然として不明なのですが、それでは格好がつかないと考えたのか、記事はPTSDに多数の行をあてています。その説明自体は有益な情報なので、いくつかを紹介します。

 2007年に、イラクとアフガニスタンで、PTSDの事例はほぼ50%増加しました。陸軍の離婚率は2001年には2.3%だったのが、2008年には3.5%に増加しました。イラクに派遣された兵士の20%近くが、結婚生活の問題を抱えています。イラクの自由作戦中に死亡した約4,490 人の兵士の862人、19%が敵の攻撃以外の理由で死亡しました。その内訳が事故、病気、自殺、友軍の攻撃のいずれかは分かっていません。

 この記事は、事件の原因がPTSDだと決め込んでいますが、まだ断定できる情報は出てきていません。状況はPTSDを連想させますが、単に頭に来ただけだったのかも知れません。それにしても、時間が経っているのに、まだこれだけしか情報が開示されないのは変な話です。証人の供述が合致しないので、審理に入れないのかも知れません。ボジセヴィッチ3等軍曹が2人の上官から、どのような内容で叱責されたのか、ボジセヴィッチの証言しか得られないとか、他の分隊員との証言が噛み合わないといった問題が考えられます。この事件については、さらに情報が必要です。


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