北朝鮮が核・ロケット施設を更新か?

2008.10.3



 東亜日報によると、北朝鮮の核実験・ロケット施設で、施設の改善が見られ、さらなる開発計画が進んでいることを窺わせます。

 この記事で気になる新事実は、以下のとおりです。

  1. 2年前に核実験を行なった咸鏡北道吉州郡豊溪里(プンゲリ)の核実験施設を復旧している。
  2. 舞水端里(ムスダンリ)にある基地に設置されたミサイル発射施設を新型にし、改補修するなど大幅な改良作業を行っている。発射台を支えるクレーンを交換。ミサイル台の補強。ミサイルに燃料と酸化剤を自動で供給する装置を設置。
  3. 発射直前にミサイルを組立てる建物を増築。

 1.は、言うまでもなく、北朝鮮が再び核実験を行う可能性を示唆します。

 2.は、打ち上げ準備の短縮を狙っていると考えられます。前回はタンクローリーから直接給油する方式で時間をかけましたが、今回は事前にタンクに燃料を入れておき、組み立て終了後に直ちに連続給油を始められます。それでも、軍事ミサイルに必要な迅速さまでは期待できません。打ち上げ時期を隠蔽するのが目的だと、記事には書かれていますが、隠蔽することに大した意味はありません。

 3.は、作業効率を高めるのが目的なのでしょうが、どれくらい増築したのかが分からないので、何とも言えない部分もあります。Google Erathの舞水端里の写真(下)は、2003年4月3日に撮影されたもので、増築前の様子しか分かりません。この建物は長さが50m程度と見られます。ここで、ロケットを各段ごとの最終組み立てを行い、トレーラーで発射台まで運び、クレーンで持ち上げて組み立てていくのです。テポドン2号の推定全長は35.8mです。上から順番に全部を並べて組み立てても現状で十分なスペースがあると考えられます。

写真は右クリックで拡大できます。

 他に、偵察衛星の情報ではないと思われる「テポドン2号の2段階推進体を新型エンジンに替えた」という情報も載っています。1段機体のエンジンにも問題があるといわれていましたが、2段機体も替えたということは、断言できませんが、8月のイランでの打ち上げ実験の問題を解消するためでしょうか。

 最近、元CIA職員から北朝鮮がすでに核爆弾をミサイルに搭載する技術を持っている証言が出たという記事が報じられています。この主張は具体的な証拠ではなく、他国の開発期間との比較による推定でした。

 これらの情報を見ると、北朝鮮はかつて米ロがやったように、宇宙開発を行いながら、核ミサイルの可能性も模索しているようです。おそらく、人工衛星の打ち上げを受注したいという考えもあるのでしょう。少なくとも、1段機体と2段機体のエンジンの問題が解決しない限り、テポドン2号は完成しません。ロケット開発は試行錯誤の繰り返しで、ロケットの墜落は開発途上で常に起こることです。その結果、安定したエンジンと機体が作れるかどうかが問題です。今のところ、その可能性は高くはありません。来年あたり、また改良型の打ち上げが行われるでしょうが、失敗する可能性も十分にあります。

 舞水端里にしろ、東倉洞(トンチャンドン)にしろ、ここからのロケット打ち上げのロケット開発に占める位置づけは変わりません。しかし、東倉洞から打ち上げられた場合は、日本上空を通りません。そのため、日本のマスコミは東倉洞からの打ち上げを、舞水端里の時よりも大きく報じないかも知れません。成果の度合いが同じなのに、こうした区別がつけられることには意味がありません。私たちは、こうしたマスコミの取扱の違いには注意しなければなりません。


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