ネルパ事故:信じがたい「水兵の悪戯説」

2008.11.25



 ロシアのノーボスチ通信社によると、原潜ネルパの事故で、乗組員ディミトリー・グロボフ(Dmitry Grobov)が刑事上の過失致死罪(criminally negligent homicide)に問われました。

 ロシア最高検察庁の捜査委員長アレキサンダー・バストルキン(Alexander Bastrykin)によると、グロボフは温度検知器を誤動作させて事故を引き起こし、最高5年禁固刑になる可能性があります。先週、広報官はグロボフが精神鑑定を受けることになるだろうと述べていました。

 国内報道では消火装置を作動させたことになっていますが、記事には「温度検知器(temperature sensor)」と書かれています。つまり、グロボフはライターか何かの熱源で温度検知器を作動させたのが、事故の原因だということなのでしょう。20日の記事では、ロシアの潜水艦は火災報知器が鳴っても、自動的に消火装置が作動するのではなく、発令所で消火装置を作動させる必要があるとのことでした。火災報知器が鳴るには温度検知器が作動する必要があり、火災報知器はしばしば誤動作します。この違いは事故を考える上で重要です。仮に、グロボフの行為が真実でも、消火装置に異常があった可能性が高くなるからです。しかし、いくら故障だったとしても、システム上、火災報知器と消火装置は連動していないのに、勝手に作動するはずはありません。消火装置が作動するには、火災報知器の警報に基づいて、発令所にいる誰かが消火装置を作動させなければなりません。その前に、火災発生場所の乗員にフロンガスを放出するので避難するように警告し、一定の時間を置いてから消火装置を作動させるはずです。

 ロシア最高検察庁の発表は事件の実態と矛盾し、受け入れがたいものです。


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