すでに報道で御存知のように、インドのムンバイで同時多発テロが発生し、大勢の犠牲者が出ました。military.comの記事から事件を考えてみます。
当サイトでは、以前からテロリズムがパキスタンからインドへ向けて拡大していく可能性を論じてきました。今回の事件は、それが正に進行している可能性を考えさせました。インドの人口は約10億人で、その80%はヒンズー教徒です。イスラム教徒は約14%に過ぎません。ですが、テロが発達する可能性はあります。そうなると、東アジアへの波及も考えられ、その点を問題視すべきです。
日本国内では、テロリズムは文明への挑戦だといった単純なテロ悪玉論が主流ですが、それよりもテロが起きる地域が次第に日本に近づいていることを問題にすべきなのです。こうした日本の現状は、テロリズムを本当に問題視しておらず、アメリカの不興を買わないことしか考えていない証拠といえます。だから、誰もが否定できないような理由を持ち出して、反論を封じるのです。たとえば、個人にとって健康が何物にも代え難いことは、誰にも否定できません。でも、医療品の業界も利益追求のために、同じことを言う場合があります。こうした主張を鵜呑みにしていると、余計な薬を買わされたり、意味のない治療を受けさせられたりするかもしれません。軍事の世界にも似たようなことがあります。日本国民は政府のテロ対策をよく見て判断しなければならないのです。
問題は誰がこのような犯行を行ったかです。記事によれば、インドのメディアは「デカンのムジャヘディン(Deccan Mujahideen)」と呼ばれてきた不詳のグループが、いくつかの放送局に電子メールで犯行声明を出したと報じていますが、声明の真偽は確認されていません。「ラシュカー・イ・タイバ(Lashkar-e-Tayyaba・「Tayyaba」は「Toiba」とも書かれます)」の関与も疑われていますが、彼らは現在、アフガニスタンに主戦場を移しているはずです。今年7月にアフガンのワナット村で米軍の前哨基地を襲撃し、米軍に基地を放棄させた武装勢力に、彼らが含まれていました(記事1・記事2)。同じ月、アルカイダがアフガニスタンに主力を移したという報道がありました。この組織はラシュカー・イ・タイバである可能性が高いと考えられます。彼らがインドとアフガンの二正面で活動を行うほど勢力が大きいとは考えにくく、本当に彼らが今回の攻撃に参加したかは疑問です。別の報道では拘束されたパキスタン人3人がラシュカー・イ・タイバのメンバーだと主張していますが、同組織は関与を否定しています。テロ組織が攻撃をして、関与を否定するとは考えられないことです。
別の記事によると、インドは犯人たちがパキスタンから来たと信じています。いずれにせよ、それは間違いないと思われます。どのグループかは分かりませんが、パキスタンで訓練を受けたのは間違いなさそうです。しかし、手口が洗練されていることから、デカンのムジャヘディンの犯行だとも断言できません。また、まったくの新参の組織がいきなり、このような大規模な攻撃をできるとも思えません。今のところは、デカンのムジャヘディンである可能性があると言えるだけです。