military.comによると、10月のイラクでの米軍兵士の死亡数は7月と同じ13人(その内8人は戦闘による死亡)で、最も低いレベルになりました。同時期、アフガニスタンでの米兵の死亡数は15人でした。2001年後期以降、1月の米兵の死亡数は、28人が死亡した6月以降、20台が続いています。
イラク政府によると、364人のイラク人(警官、兵士、市民、武装勢力)が殺されました。戦いのほとんどは、アルカイダと武装勢力が未だに活動するイラク北部で起きています。モスル(kmzファイルはこちら)では、10月15日から、米軍とイラク軍の合同作戦が行われています。米軍は5月から暴力事件が半減したと主張しますが、キリスト教徒に対するテロ攻撃のため、約13,000人のキリスト教徒がモスルから避難しました。それでも、先週には35家族、210人が家に戻り、大移動は終息したといいます。イラク政府はこれらのキリスト教徒に100万ディナール(約865ドル)を返還すると申し出ています。
globalsecurity.orgの戦死統計は印象が記事とやや違います。まだ、こちらには11人までしか死亡事例が表示されていませんが、戦死したのは6人です。あと2人が戦死して、月合計が8人になったのだと考えられます。テロ事件が減った理由は、すでに色々と説明されているので、ここでは述べません。
戦闘以外の理由が5件(約38%)もあるのは意外です。これらは、病気、事故(交通事故が非常に多い)、自殺などが考えられます。詳細は報じられないので、何が理由なのかは、特別な事情がない限りは分かりません。しかし、こういうところに、イラクの実情を知る手がかりがあるかも知れません。私はイラクで米兵の交通事故死が非常に多いことに、以前から疑問を持っていました。その理由が明らかになったのは、ノーベル賞学者ジョセフ・スティグリッツが書いた「世界を不幸にするアメリカの戦争経済」を読んだ時でした。
軍は、戦闘関連の負傷を認めることにかなり慎重であり、敵の成功を認めたくないので非戦闘と分類したがる面もある。したがって、夜間に発生したヘリコプター事故は、敵に撃墜されたという確信がないかぎり、そこに含まれないだろう。(日中の移動は危険という理由があっても)(p87)
これは、交通事故の場合にも、戦闘に関連する事例が多く含まれていることを暗示します。攻撃を避けるために夜間に車両で移動して事故を起こすケースが考えられます。攻撃を避けるために、米軍車両は常に高速で移動し、これが事故の原因になることも考えられます。このサイトでも紹介しましたが、重たい軍用車がイラクの舗装されていない道路の路肩を踏み崩し、河に転落して兵士が溺死したことがあります(記事はこちら)。こうした事故を、軍が敵の攻撃によるものと分類しないのは当然です。
戦闘以外の死亡理由について、もっと詳しく分かれば、興味深いことが分かるかも知れません。2004年に、私は兵士がプールで感電死した事例を見つけたことがありました。チェイス・R・ホワイトマン技術兵(Spc. Chase R.Whitman)は、5月8日、プールで泳いでいる最中に水に電流が流れ、感電死しました。彼が死んだ原因が、請負業者の手抜き工事による可能性があるという記事が報じられたのは、今年のことです。実に、4年も経ってから、ようやく問題に光が当てられたのです。一見関係がないように見えることも、記憶していれば、つなぎ合わせることができます。
また、負傷者の情報は治療が現在進行中であることもあり、詳細は報じられません。多くの場合、負傷者の総数が発表されるだけです。しかも、何を負傷と認定するかにより、総数は上下します。医師にすれば、擦り傷も感染症を引き起こす恐れがあるので負傷としますが、軍は戦闘に支障がない程度なら負傷に数えないでしょう。この点、「死亡数」は死亡したという明確な事実があるので、軍の都合で数が変わることはありません。だから、観察に用いるのは、負傷者数よりも戦死者数の方が適しているわけです。しかし、負傷者数や怪我の内容が分かれば、その戦争の実状がもっと見えてくるはずです。戦争を観察するには、こんなところに目を向けることが、むしろ必要なのです。