イランがイラクへEFPの供給を休止

2008.12.15



 military.comによると、イランはイラクの武装勢力にEFPを供給するのを止めたようです。EFPは堅固な装甲板を貫通するIED(簡易爆弾)で、耐爆式のMRAP装甲車を破壊した実績を持つ危険な爆弾です。

 今年早期には、イラクで米軍は月間60〜80個のEFPを発見していましたが、現在は12〜20個に減りました。国防総省のIED対策責任者トーマス・メッツ陸軍中将(Army Lt. Gen. Thomas Metz)は、イランの革命防衛隊がEFPを減らす決断をしたと推測しています。EFPはイラクで発見されるIEDの約5%に過ぎませんが、30%の犠牲者を出しています。国防総省の統計によれば、10月に連合軍は411個のEFPを発見し、今年早期には1,321個、2006年の10月には2,529個が発見されたのに比べると減少しています。10月にIEDで死亡した連合軍兵士は2人で、1年前の20人、2006年10月の74人と比べて減少しています。アフガニスタンでは、10月に264個のIEDが発見され、2007年10月の274個(同年の最高値)と比べて減少しています。アフガンでIEDの数が最も増えたのは今年8月で329個でした。

 イラクで死傷者が減ったのは、IEDが減ったことに大きな理由があります。数が減ったというFEPを含むIEDはイランが供給しており、活動を休止している民兵組織マハディ軍(サドル師が指揮)はイランと関係が深いことが分かっています。明らかに、イランはイラクの武装勢力への支援を減らし(停止ではないことに注意)、アフガンでの活動を強化しています。それは米軍をアフガンに移動させるためです。様々な報道を見ても、米軍やNATOがそれを認識して、対策を講じているという記事はありません。このため、大軍がアフガンに集結した来年の秋以降、イラクで再びテロ活動を強化するイランの戦略が心配されます。すると、アメリカは再びイラクに増派せざるを得なくなり、対テロ戦争は非常に厳しいものとなります。ロシアは自国の利益に被害が及ばないかぎりは、イラクやアフガンに手を出しません。こうなった後、アメリカは戦闘部隊の派遣を含む協力を日本に求めてくる可能性があると考えておくべきです。

 同時多発テロが起きた時、こうしたことも考えた人がどれだけいたかを、今一度考えるべきです。ブッシュ政権はまったく頓着せず、米軍指導部もその危険性を指摘して注意を喚起しようとはしませんでした。日本でも対米支援を叫ぶ人が見られました。「テロリズムとの戦いに参加しないと、日本は世界からつまはじきになる」という意見でした。しかし、体面を気にする前に、まずどのような戦いになるのかを考えてみるべきです。戦争は体面などには無頓着で、冷酷に進展します。戦いの法則を無視した者には、応分の報いがあるものです。その犠牲は体面を失うよりも大きいと考えなければならず、見通しが立たない場合は、指一本動かすべきではないのです。このことは戦争を考える上での要諦であり、注意してもしすぎることはないのです。


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