ワシントン・ポストが、米陸軍を危険なまでに引き延ばさないためには、現役兵を少なくとも3万人増員する必要があるとするネルソン・フォード陸軍次官(Undersecretary of the Army Nelson Ford)の発言を報じました。
記事によれば、陸軍の現役兵は対テロ戦前の482,000人から547,000人へ増員する途上にあります。前に紹介したとおり、米陸軍は2012年までに、このレベルへ増員する予定でいます(記事はこちら)。しかし、それでも、米陸軍が新しく登場した5〜10種の任務、サイバー戦争、本土防衛、機密情報収集などをこなすためには、少なくとも580,000人が必要だというのです。
547,000人の兵数で当面は足りると思っていましたが、そうではなかったようです。新たな増員が決まった場合、当然、人件費は増え、国防予算は当初いわれていた、横ばいか緩やかな上昇よりも高い率で増加することになります。新大統領が政策を切り替えても、その効果は直ぐには出ません。このことをよく記憶し、日本で起きた場合の影響を見積もっておくべきです。近頃は、とかく防衛問題では理念だけで意見を述べる人が増えています。政治家は「対テロ戦争に参加しないと国際社会から批判される」という恐怖感から、情勢分析を抜きにした戦略論を述べます。何年も前に、ディベート教育が大流行した時も、この種の議論が正しいように、その教科書に書かれたものです。こうした意見は、情勢分析を元に慎重に判断されたものではありませんでした。周囲の雰囲気で物事を判断する日本人の特性を一歩も出ていなかったのです。田母神小論の問題で分かるように、現役自衛官までが、「国家観」というイデオロギー的な考察に凝り、情勢分析を怠っていることが明らかになった現在、我々は一層戦争を客観的に、冷静に観察していく必要があると考えます。
また、以前にヒューストンのヒューストン徴募大隊で自殺者が続発した紹介しました(記事はこちら)オクラホマシティ徴募大隊(Oklahoma City battalion)が薬物問題を抱えていることが分かりました。military.comによると、200人いる徴募官の少なくとも30%が抗うつ剤か不安神経症の薬を使用しています。若干の徴募官はマリファナを含む麻薬を使用しています。
徴募官には帰還兵もおり、彼らがPTSDの治療薬や麻薬を使用していたとしても、特に不思議はありません。陸軍は最近、徴募目標をクリアしていますが、その背後にはこうした問題が存在します。しかし、新卒者や転職者の相談に乗る徴募官が心身の健康を害しているのでは、それこそ志願者が減る原因になるかも知れません。もちろん、なによりも徴募官の健康が心配です。さらなる増員が必要になった場合、徴募官の問題はさらに拡大する恐れがあります。
なお、本日は、トルコとイラクがクルド人問題で共同行動をとることで合意したmilitary.comの記事も注目されます。