米陸軍の自殺増加が止まらない

2008.2.1



 アフガニスタンで活動するアルカイダのトップ指揮官2名が死亡したというよいニュースとは反対に、米陸軍で自殺者が急増という悪いニュースが報じられています。

 military.comによれば、2007年に米陸軍では121人(自殺と断定された者が89人、そう考えられる者が32人)が自殺し、前年よりも20パーセントも増加しました。実は、昨年8月に報じられた記事では、2006年の自殺者は99人で、前年の88人を越え、1990年の102人以来最大となっていました。つまり、年々自殺率が増加してきている訳です。

 自殺の34パーセントはイラクに派遣中に起きており、前年の27人を越えています。自殺を試みたり、自傷事件を起こした者は約2,100人もおり、前年の1,500人、2002年の500人を越えています。100,000人あたりの自殺率はまだ算出されていませんが、2006年は17.5パーセントで、2001年の9.1パーセントを上回り、1980年に集計がはじまって以来、最高となりました。米陸軍の専門家は、対人関係の問題、法律上や経済上の問題、仕事上のストレスが主要な問題であり、イラクやアフガン、近隣諸国に派遣された期間と自殺者の数に関係があるともみています。

 戦争が起こると軍人の自殺者が増えるのは、過去から当たり前に観測されてきたことです。ところが、PTSDが米軍で正式に研究されるようになったのは1980年代という、ごく最近なのです。この問題について、軍隊は長年目を背けてきました。軍隊だけでなく、兵士の家族からもこうした問題は理解されにくい部分がありました。特に、戦前の日本では家の恥として隠されがちの問題でもあったのです。対人関係、法律と経済的な問題とPTSDがどのような関係にあるかは、まだ明らかになっていません。PTSDがなければ、兵士は他の問題を克服できるのかといった事柄が解明される必要があります。

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