自衛隊の新型戦車は対ゲリラ用か?

2008.2.13



 今日、2010年から配備される予定の陸上自衛隊の新型戦車の試作車が公開されました。写真を見る限り、当初より予測されていた形に落ち着いたようです。

 小型で強力な火砲を持っている点は望ましいと思えます。海外で使う必要がなく、近隣諸国に日本への渡洋作戦を思いとどまらせる実力が日本の主力戦車には求められています。お互いの位置を把握できるC4I機能がどれだけのものかが気になります。戦車の性能がある程度頭打ちになった現在、コンピュータを使った情報の共有が戦車の性能を手っ取り早く上げる要素だと言えるからです。記事には「現場状況のデータ共有」と書かれていますが、その内容が気になります。

 しかし、防衛省が「連携が強まり、ゲリラ攻撃に対処できる」と説明しているのは噴飯物です。C4I機能は機甲部隊同士の戦闘能力を向上させるためのものです。大量のゲリラが日本に現れる可能性はなく、ごく少数のゲリラに対して戦車は強力すぎて使いにくい武器です。ゲリラは重機関銃で十分に制圧できますし、砲撃なら間接照準・曲射弾道の迫撃砲や榴弾砲で十分です。それなのに、開発の目標としてゲリラへの対処が掲げられていたのは、最近は「ゲリラ」といえば話が通りやすくなる傾向に便乗しているとしか思えません。C4I機能は、敵の戦車部隊よりも早く状況を判断して行動に移すための機能で、戦車部隊に反撃する能力が少なく、移動速度も遅いゲリラ部隊には効果を発揮できないのです。少数のゲリラ部隊を掃討する場合、数量の戦車を現場に運んでおくことになるでしょうが、それは出番を待つだけになる可能性の方が高いと考えられます。

 それでも、「ゲリラ」といえば話が通ってしまうから防衛省も使いたくなるのです。そんな話を聞いてしまう国民にも問題はあります。随分前に、大学で教えているという人と掲示板で話したことがありますが、その方は、北朝鮮のゲリラが日本を混乱させるために漁船に偽装した船で上陸し、ビルに立て篭もるという話を展開しました。しかし、建物に籠もってしまえば包囲、殲滅されるだけです。その方は、ゲリラは死角がないように武器を配置すると主張しました。それができれば苦労はないと思います。建物の近くには他の建物も建っているでしょう。そんな状況で全周をどうやって警戒するのかまったく分かりませんでした。こういう場合、敵が出てきたら攻撃できるように包囲しておいて、あとは砲撃で決着をつけるだけです。市街地では直接照準を主な任務とする戦車は使いにくく、曲射弾道の砲でじっくりと確実に建物ごと破壊してしまいます。戦車に出番があるとすれば、敵の数が莫大で、即刻排除しなければならない場合だけで、これは正規軍との戦いを意味します。

 国民は防衛省に「もっとまともな説明をしてくれ」と注文を出すくらいでなければいけないと思うのです。

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