大統領に面会した海兵隊員が自殺

2008.5.19



 military.comによれば、アメリカの英雄がPTSDのために人生を棒に振ったようです。ブッシュ大統領に面会したこともある海兵隊員トラビス・N・トィッグス二等軍曹(Staff Sgt. Travis N. Twiggs)が奇妙な自殺を遂げました。

 先月、トラビスはイラク帰還兵の組織「the Wounded Warriors Regiment」と共にホワイトハウスを訪問しました。彼はイラクで4回、アフガニスタンで1回の遠征を務め、PTSDのセラピーを受けていました。彼は「閣下。私はあそこで何度も任務に尽きました。いつでもあなたのために任務に就くつもりです」と述べて、大統領とハグを交わしました。2週間後、彼は無許可で部隊を離れ、彼の兄ウィラードと共にグランドキャニオンに行きました。彼らの車はそこで木に引っかかった状態で発見されました。車は深い裂け目に入ろうとして失敗したとみられています。月曜日に兄弟は車を乗っ取り、2日後にアリゾナ州の国境検問所に現れましたが、2番目の検査エリアに入るよう命じられると引き返しました。トホノ・オ・オドムのインディアン居留地(the Tohono O'odham reservation)の中、80マイル後方で、車はタイヤをパンクさせる装置で停止させられました。警察と国境の警備員が接近すると、トラビスはウィラードを射殺し、次いで自分も自殺しました。

 地元警察は、兄弟の行動の動機は不明だとしています。トラビスの妻ケリーは、海兵隊がPTSDを正しく扱ってくれていれば、事件は起こらなかったとコメントしています。トラビスは1993年に入隊し、受勲もしました。1月に「the Marine Corps Gazette」に彼が書いた記事(別サイトに再掲載された記事はこちら)によると、彼の小隊の2人の退院が死んだ時から彼の人生は「急降下」しました。トラビスは部下を死なせたことで強いストレスにさらされはじめたのです。まずいことに、彼は治療を受けたものの、薬と酒を混ぜて飲んでいたようです。これは極めて危険なことです。精神病の薬を酒と混ぜると、異常な行動をはじめ、自殺することもあります。しばしば、無知からこうしたことをやって自殺してしまう人が日本にもおり、いくつかの芸能人の自殺にそれを疑わざるを得ないケースがあります。彼の症状は最後まで治らず、家族と上官を失望させたと、彼は書いています。

 まったく衝撃的な事件です。事件の真相は不明ながら、PTSDで人生を諦めた海兵隊員と、彼に同情した兄が自滅的な逃避行に出た結果だと推測できます。それも、彼が書いた文章を読む限り、才能のある人物と思える人物が、理解できない行動を取った点が悲劇的です。しかし、「戦争の心理学 人間における戦闘のメカニズム」を読むと、こうした異常な行動もまったく不可解ではないことが分かります。戦闘が起こす激しいアドレナリンの噴出が人間の肉体と精神に問題を引き起こすことは、戦争を考える上で忘れるべきではありません。5回も戦闘地域に繰り返し派遣されたことが、彼のPTSDを悪化させたことは疑いの余地がありません。彼が薬と薬物を一緒に飲んだのは、症状がかなり酷く、それから逃れようとするための行為であったことも間違いありません。トラビスは、それが問題であることを理解していたようで、このことを妻には隠していたと書いています。嗜癖の程度が酷いのは、苦痛を避けようとするためです。PTSDの研究は、軍が公式に病気として認めるのが遅れたために、未だに不完全な段階にあります。「臆病者の病気」「仮病」といった偏見を脱するまでに時間がかかったことが対処の不備を招いています。

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