military.comによると、7月の米軍の戦死者は11人で、過去最低となりました。イラク人の死者は、民間人と軍人を会わせても、2005年12月から最も少ない510人となり、去年の同じ期間の2,021人に比べると、75%もの下落を示しました。
バグダッドの死体安置所には、ピーク時で1日に125体の遺体が運ばれてきましたが、現在は10〜15体に減りました。イラク保健省の係官は、現在の暴力の発生率は標準的な国に近いと述べました。しかし、一ヶ月で暴力で510人も死亡する国が、治安良好といえるのかは疑問です。キルクークでは57人が死亡した自爆テロ攻撃が起きています。このような大きな事件が起きるようでは、治安が安定したとは言えません。
こうした結果を受け、アメリカは増派がテロを押さえ込んだと発表することになるのでしょう。増派部隊が帰還し、それ以前よりも少しだけ兵数が多い状態になっても、テロ事件が増加しなかったという理屈です。
私は、この状態は増派が無意味だったことを意味していると考えます。米軍の数は、テロ事件の総数と大きな関係はなく、武装組織の意志がそれを左右しているのだと見るべきです。アンバル州では地元部族がアルカイダに協力しなくなるという自発的な変化を見せました。シーア派の武装組織マハディ軍は活動を休止中です。米軍の主導によってテロ事件が減ったのではなく、ほとんどはイラク人の決断の結果です。シーア派の商人の言葉が記事に引用されています。「イラク人はもう暴力の連鎖を続けることに興味がない」という言葉に、イラク人が自発的にテロ攻撃を止めたことが裏づけられています。その一方、活動を再開する細胞や外国に逃れている戦士がいることをあげ、この平和が一時的だとするイラク人もいます。イラクでは過去から宗派抗争が続けられてきました。この国では、テロ事件はなくならないのが普通です。
イラクに駐留する米軍の総数とテロ事件の数はバラバラに推移してきました。GlobalSecurity.orgのイラク駐留米軍の兵数と米軍の戦死・負傷数を合わせてグラフにしてみると、それは一目瞭然です。兵数を増やしたから、戦死者が減るという関係は見出せません。(ワークシートのデータはこちら)