military.comによると、ワシントン・ポストのボブ・ウッドワード氏は、新刊「The War Within: Secret White House History 2006-2008」の中で、イラクでのテロ事件の激減は、特殊な計画によるものだと書いています。ワシントン・ポストには、この本の特集記事が載っています。
ウッドワード氏によると、その技術は、イラクにいるアルカイダの指導者やその他の武装勢力の位置を特定し、殺す能力を持っています。その技術は不明ながら、第2次世界大戦のマンハッタン計画(原爆開発)に匹敵し、アメリカ人の戦争における創造性溢れる解決法の実例だそうです。この技術のお陰でテロ事件は数ヶ月で半減し、これは警備態勢の統合や増派によっては起こらないと、ウッドワード氏は述べています。
率直には信じられない記事です。神浦元彰氏がJ-RCOMで述べているように、携帯電話を使った位置特定システムである可能性が非常にたかいと、私も考えます。これに音声解析で個人を特定するソフトウェアがついているのかも知れません。しかし、アメリカの原爆開発に匹敵するほど画期的だとすると、この技術では足りない気もします。
数ヶ月でテロが半減した事実は、アルカイダの戦略転換が原因であったことを、より強く示唆します。新技術による成果がそれほど早くに出るとは考えにくいからです。すでに報じられているよう、アルカイダがイラクからアフガニスタンへ戦略転換を行ったことが、テロ激減の本当の理由ではないかと思われます。このことが報じられたのは、7月下旬のことでした(記事はこちら。1、2)。ウッドワード氏がこの事実を知った上で原稿を書いたのかどうかを知りたいところです。本が今月8日に発売されたことを考えると、時間的には原稿を修正できる時期に、この報道に接した可能性は十分にあります。
秘密兵器の存在は本当でも、対テロ戦への効果は、おそらく多分に誇張されていると思います。そして、ウッドワード氏も、秘密作戦だけで暴力が減ったとは考えていなかったことが分かりました。ワシントン・ポストは、10日午後1時(日本時間11日午前2時)から、ウッドワード氏が読者の質問に直接答えるイベントを行いました。事前に質問を出せるようになっていたので、質問を出してみたのですが、私の質問には答えてもらえませんでした。しかし、別の質問に対するウッドワード氏の答えが、一部私の疑問を解いてくれました。
メリーランド州コロンビア市:ウッドワード氏が言及した特殊作戦は、増派の期間中や以後に計画されたのですか?増派はこの作戦を後押ししましたか、それともそれぞれ別々に成果をあげたのですか?
ボブ・ウッドワード:暴力を提言するのに非常に効果的だった秘密作戦は、2007年春に稼働し、ほぼ同じ時期に増派部隊がイラクに配備されました。私は増派と秘密作戦の両方がお互いに助け、補完し合ったと信じます。別の重要な要素は、大勢のスンニ派が、武装勢力だった者の多数が、米軍と契約する決意をした、いわゆるスンニ派の目覚めです。これらのいずれも単独で暴力の劇的な減少の原因となることはありません。
これまで新兵器が劇的に戦況を変えることがなかったのを考えても、ウッドワード氏があげた中で最も効果的だったのは、スンニ派の目覚めだと考えます。7月の記事によれば、アルカイダの戦略転換が起きたのは、スンニ派の目覚めによってイラクでの活動が難しくなったためというのが、駐米イラク大使サミル・スマイダイエの見解でした。変化の原因は主にイラク側から生まれているのだと考えます。