トンチャンドン発射基地が近く完成か?

2009.2.2



 Global-Security-Newswireは、北朝鮮が西海岸に建設している新しいロケット発射場「トンチャンドン(東倉洞)発射基地」が数ヶ月以内に完成するかも知れないという専門家の見通しを報じました。

 インターナショナル・クライシス・グループ(International Crisis Group)のダニエル・ピンクストン氏(Daniel Pinkston)は、北朝鮮がトンチャンドン基地からロケットを発射する準備をしていると主張しています。

 ピンクストン氏は次のように連合通信に語りました。

 「ペクトゥサン2号(テポドン2号の北朝鮮名)が新しい施設から打ち上げられれば、小型の人工衛星を、どの近隣諸国の領空も飛ばずに極軌道(北極と南極を通る軌道)に乗せられます。機体は日本上空を通過しますが、北朝鮮は日本の領域を通過する前に宇宙空間に入ったと主張するでしょう。これはとても説得力があります。北朝鮮が韓国がするよりも先に人工衛星を打ち上げれば、金正日は巨大なプロパガンダを手に入れる機会を得ます」

 また、プルトニウムを使わない高性能爆薬の起爆テストが2008年後半まで行われており、北朝鮮はこのテストが外国から観察されることを知った上で、最適な政治的効果を生む時期を選んでテストを実行しています。プルトニウムを使うインプロージョン方式の原爆は、爆弾の中心部に向けてプルトニウムを圧縮するために、爆弾の外縁に配置した爆薬を同時に爆発させます。この技術は高度で、繰り返しの実験が必要です。北朝鮮はそれを行っていることを世界にアピールしているわけです。

 ピンクストン氏は、それは北朝鮮が核保有国だと世界から認められ、対等の外交関係を樹立することを目標にしているとし、オバマ政権の北朝鮮との直接対話を支持しました。

 昨年9月にトンチャンドン基地の存在が報じられた時、私はこの基地からは極軌道衛星が打ち上げられると書きました(記事はこちら)。これはロケット科学の常識から簡単に導き出される結論でした。それがいよいよ実現しようとしています。予想していたよりも、少し早い気はしますが、いずれにしても今年中にまた打ち上げ実験があるだろうというのは、大方の専門家の見方です。しかし、基地が完成するのなら、早々に実験が行われる可能性あります。今度は、燃料保管・注入施設が完備されているので、衛星写真から打ち上げの前兆をつかむのは前よりも難しいかも知れません。

 前にも書いたとおり、トンチャンドン基地からロケットが打ち上げられると、日本の上空は飛びません。そこで、国内メディアがどのように実験を報じるのかが気になるところです。日本上空を飛ぶかどうかに関係なく、実験が行われるのは北朝鮮のロケット開発が一歩進むかも知れないことを示します。危機が増えることでは同じなのに、国内メディアはそれに着目しないかも知れません。「なぜ今回は極軌道衛星なのか?」といった凡庸な疑問に終始した報道になるかも知れません。しかし、そんなことに気を取られていてはいけず、私たちはもっと必要なことを読み取らなければなりません。

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