military.comによると、オバマ大統領は18ヶ月以内にイラク駐留米軍100,000人以上を撤退させる決定を正式に発表しました。しかし、同時に50,000人程度を残留させるとも述べました。この方針について、military.comが報じています(記事はこちら)。
国防省報道官ジェフ・モレル(Geoff Morrell)は、残留部隊には3つの主要な機能があると言います。
- イラク軍の訓練と支援。
- イラク国内のアメリカ人と米国資産の保護。
- イラク軍が主導する限定的な対テロ作戦。
また、モレルは多くの兵隊は情報分野で長期的なアドバイザーを務めたり、ヘリコプター部隊のような装備のギャップを埋めると述べました。
これは議論を呼ぶ話です。これまで、残留するのは数個戦闘旅団とされてきました。1個旅団の兵数は約3,500人ですから、3個旅団だとしても1万人程度なのです。それが5万人になったのだから、当初の話から大幅に増員されたことになります。それに、情報分野やヘリコプター部隊だけなら、5万人にはなりません。当初は残留部隊の任務はイラク軍と警察の訓練だとされてきましたが、限定的とは言いながら、米国人と権益の保護や対テロ作戦が可能ということが分かりました。つまり、武装勢力がアメリカの資金で作られた油井やパイプラインを攻撃した場合、掃討作戦を行うことが可能なのです。こうした作戦では、襲撃者を明確に特定し、彼らだけを攻撃するのは困難ですから、その地域にいる武装勢力全体を掃討することになります。これでは依然と大して変わらないことになります。(1)と(3)は現実的にはほとんど同じことなのです。どの項目がどれだけ行われるかで、結果は大きく変わってくるはずです。
今回の方針変更が、米軍側から出た話なのは疑いようがありません。昨年12月に、当サイトで、連合軍指揮官レイモンド・オディエルノ大将(Gen. Raymond Odierno)が残留部隊が必要だと主張していることを紹介しました(記事はこちら)。この時、残留部隊の兵数は明らかにされませんでした。最近になって、数個旅団という話が出てきて、最終的には5万人(14個旅団規模)と決まりました。これは、具体的な数字を出すと話が進まないので、徐々に兵数のレベルをアップさせ、世間の批判を回避しようとしたように思われます。ここで気になるのは、発表されない議論、ホワイトハウスと米軍の間でなされた議論です。ホワイトハウスは撤退期日と兵数で妥協したわけですが、それだけに米軍には決めたことは確実に実行するよう求めているはずです。
別の記事によると、イラク軍は未だに補給に問題を抱えており、米軍の支援なしで活動できるように切り替えている最中です。基本的なレベルには達したと言いながら、これに足を引っ張られ続け、多くの部隊が残留する羽目になるかもしれません。こうした理由によって、イラク撤退は予定通りには行かない可能性があります。イラク国内の武装勢力には、ここでテロ活動を活発化させ、アメリカで撤退延期案が浮上することを狙うという手があります。サドル師のマハディ軍が再始動するかも知れません。アフガニスタンに増派が進み、イラクの撤退が進んだところで、テロを活発化させるのです。こうして完全撤退の期日が守れなくなる可能性も考えておくべきです。むしろ、これからのイラク情勢に注意が必要です。