対テロ戦争に名誉勲章が少ないのはなぜ?

2009.9.19
追加 2009.9.20



 military.comが「なぜ名誉勲章受勲者に生存者がいないのか?」という記事を掲載しました。2001年の同時多発テロ以降、名誉勲章の受勲者は数が減りになり、死者ばかりで、生きている人は一人も受勲していません。

 先日、オバマ大統領はジャレッド・モンティ一等軍曹(Sergeant First Class Jared Monti)の名誉勲章授与式を行いましたが、彼も死後受勲者です。モンティ一等軍曹は同時多発テロ以降、6番目の受勲者で、アフガニスタン戦では2番目です。最後の生存者で名誉勲章を受勲したのは、ロバート・P・キャンディ中佐(Major Bruce P. Crandell )で、2007年に授与されました。受勲理由は1965年のベトナム戦争時代の英雄的行為でした。同時多発テロ以降に6人しか名誉勲章が出されていないことを、イラクとアフガンの退役軍人でもあるダンカン・ハンター・Jr下院議員(Rep. Duncan Hunter Jr.)が問題視しています。これに対して、戦争の形態が変わり、接近戦が減ったために、名誉勲章を受勲するような武勲を立てにくい環境となったことと、勲章の種類が増えたため、過去には名誉勲章をもらうような人物も、より下位の勲章をもらうようになったためだという意見が紹介されています。現在、敵から遠く離れたところから攻撃する場合が増えました。米軍の犠牲者の75%はIEDによる攻撃であり、敵は近接戦闘を行おうとしません。過去には、銀星章(Silver Star)、青銅星章(Bronze Star)、勲功章(Legion of Merit)もありませんでした。

 ある程度の説明になっているとは思うものの、この記事には疑問もあります。IED攻撃は最初から大々的に用いられた戦術ではなく、イラク占領直後は通常の接近戦が何度も繰り返されました。そうした環境の中で、名誉勲章を受けたのは2003年4月に戦死したポール・レイ・スミス一等軍曹で、その次が2004年4月に戦死したジェイソン・ダナム伍長です。スミス軍曹が戦死した時は、まだ接近戦闘が行われていた時期です。ダナム伍長が受勲する頃には、武装勢力の戦術はIEDに変化していました。受勲したのは彼一人です。武装勢力が本格的にIEDを使うようになるまでには2〜3ヶ月かかったと記憶します。また、初期の「イラクの自由作戦」では激しい戦闘が繰り返されました。それでも、その時期に一人にしか名誉勲章が出されなかったのは、私には意外なことでした。

 名誉勲章の受勲条件は「際立った勇敢な行為」であり、「戦死」した事実は含まれていません。「戦死」は「武勲」ではなく、犠牲を意味します。犠牲を顧みない武勲なら認められますが、犠牲だけでは名誉勲章は与えられません。だから、生存者にも名誉勲章が出されていますし、異なる武勲で2個受勲した人もいます。武勲は自らの判断で行った行為が、特に夕刊だったと認められることです。プロ・フットボール選手で高給をもらっていたのに、わざわざ陸軍に志願したパット・ティルマンは味方に撃たれるという悲劇的な最期を遂げました。しかし、彼に名誉勲章が与えられることはありません。彼が行ったのは、味方に同士撃ちになっていることを知らせようとしたことで、これは兵士として一般的な行動であり、際立った勇気とは言えないからです。このため、ティルマンは銀星章を死後に受勲しました。ティルマンに関連する記事はこちらを参照してください。ティルマンの関連記事は、このサイトを検索すれば他にもいくつか見つかります。なお、別の関連記事には、小火器による死者が2006年にそれなりに存在し、IEDによる戦死者ばかりではないことが示されています。

 名誉勲章の受勲条件は設立当初と現在とでは異なっており、全員が同じ条件で受勲したわけではないのも確かです。しかし、最近について言えば、大体、名誉勲章が与えられるのは、自らの犠牲を顧みず、友軍を援護した人であり、その行為の結果として戦死した人です。そうした条件に合致する人が接近戦闘が行われた期間に一人しか出なかったとは考えにくいものがあります。記事が説明したこと以外に、何か理由があるのだろうと想像できるのですが、明確には分かりません。戦闘環境の変化と武勲の関係は軍の研究対象にはならないテーマですし、こうした問題は兵士の主観的な記憶として語られるだけです。ぼんやりと思い浮かぶ理由は、受勲には英雄的行為の推薦者と目撃者が必要であり、これらが欠如しているために受勲者が減っているということです。何らかの理由でこれら二者が減るようなことがあれば、結果として受勲者が減る可能性はあります。それが何かは、私にはまだ分かっていません。


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