military.comによると、米陸軍はイラク派遣を拒否した最初の将校であるエーレン・ワタダ中尉(First Lt. Ehren Watada)の除隊を認めました。
ワタダ中尉の弁護士ケネス・ケーガン(Kenneth Kagan)によると、彼は10月2日、「名誉除隊以外の状態(under other than honorable conditions)」で除隊が認められます。フォート・ルイス基地(Fort Lewis)の報道官はプライバシーの問題により、除隊のタイプは公表しませんが、「高等軍事裁判にかわる軍の利益のための除隊(resignation for the good of the service in lieu of general court martial)」とだけ述べました。ワタダ中尉は軍事裁判にかけられましたが、2007年2月に手続き上の誤りが発覚して、審理無効となっていました(過去の記事はこちら)。陸軍は再度裁判を行うことを望みましたが、連邦判事はそれは同じ事件で二度裁判を行わない「一事不再理」にあたり、「二重の危険(double jeopardy)」の恐れがあるために憲法上の保護に抵触するとして認めませんでした。ケーガン弁護士は、ワタダ中尉がすでに辞表を提出していましたが、陸軍は受け取りを拒否したと述べました。「しかしながら、今回は辞表は受理されました。みたところでは、ただ陸軍が法廷でワタダ中尉を打ち負かせないことを理解したために」。
最高で禁固6年と不名誉除隊のはずが、種類は不明ですが除隊が可能になったことで、実質的にはワタダ中尉側の勝利となりました。米陸軍は良心的兵役拒否を認めていますが、極めて少数の事例にしか適用していません。それには「イスラム教徒なので、同じイスラム教徒を殺したくない」といった明確な理由が必要なのです。軍隊では宗教は尊重されるので、こうした理由は通りやすいのです。ワタダ中尉はイラクに派遣された後、次の派遣の準備段階に入る前、この戦争は非合法であり、自分は戦争犯罪に加担することになると主張して派遣を拒否していました。つまり、彼の主張は先の派遣の体験に基づいた判断です。こういう場合、米陸軍は除隊を認めず、軍事裁判で処罰を下そうとします。そうしないと、軍が遂行している戦争が非合法だと認めることになりますし、各兵士の判断で兵役を拒否されると、軍自体が成り行かなくなるからです。しかし、イラク侵攻は戦略的な誤りという認識が定着した現在、裁判による手段も尽き、軍はこれ以上の追求をしないことに決めたわけです。ワタダ中尉の事例は特別で、今後も良心的兵役拒否が許可される枠は、そう広がらないでしょう。この狭さが以前から問題視されているところです。私なら、イラク戦争が軍事的に有効ではないことを理由にしたいと思いますが、これは大統領が決定した作戦に文句を言うことになり、これは高等軍事法廷の手に余る話になるのです。