military.comによると、ブラックウォーター社(現、Xe社)は、2007年にイラクのバグダッド、ニソア広場(Nisoor Square)で17人のイラク人を殺害した銃撃事件で被害者と和解しました。
同社のスーザン・バーク弁護士(Susan Burke)は連邦裁判所で訴訟棄却の申し立てを行いました。この事件で負傷したハッサン・ジャビル弁護士(Hassan Jabir)は、負傷者すべてが和解に同意し、「私はブラックウォーター社に対して勝利したと感じています」と言いました。。この訴訟は死亡と負傷の補償を求めていました。会社の契約人の行動を対象とした連邦の捜査と違い、民事訴訟はブラックウォーター社と創業者のエリック・プリンス(Erik Prince)を訴えました。和解の条件は公表されていません。
この事件は過去に何度も紹介しています(最も詳しい記事はこちら)。車列を警護中の同社の警備員が攻撃を受けたと勘違いして、発砲を始め、周囲にいたイラク人多数を殺傷したのです。この事件が元で、ブラックウォーター社はイラク政府から営業ライセンスを取り消されることになり、民間軍事会社に対する批判がさらに高まる原因となりました。国際法に縛られない民間軍事会社がやりたい放題だったことは、様々な証拠から明らかで、この事件はその代表です。アメリカ国内でやれば逮捕され、CNNで大々的に報道されるようなことでも、イラクではおとがめなしという現状の中、民間軍事会社の警備員が面白半分で不必要な発砲を行っていた事実も確認されています。 「どうせ満足な法律もない連中だから」という差別意識が、こうした罪を犯させたのです。元は軍規(軍規は国際法に矛盾しないように作られています) で拘束されていた軍人も、民間に転じた途端に法の隙間に気がつき、 士気崩壊を起こすのです。
こうした民間軍事会社の警備員が報じられるようになると、日本の軍事オタクやガンマニアは彼らを「プライベート・オペレーター」と呼ぶようになり、憧れの対象として見るようになりました。こうした連中は戦争が起こす問題をまったく理解しておらず、民間軍事会社の警備員が厳密には「傭兵」ではないことも、そう呼ばれるのは「戦争の犬」という軽蔑の意味が込められている時だけだということも理解していません。これは発展途上国の人たちに銃で弾を浴びせかけることがカッコウよいという、まったく低レベルな話でしかありません。そもそも、本物の銃器のことを理解すれば、それが空想話に過ぎないことが分かるはずです。戦闘はサバイバルゲームとは違うことを理解しなければなりません。
民間軍事会社の悪行は、このサイトでも何度も紹介してきました。今回、ようやく事件が和解に達したことはよいのですが、その存在が消えたわけではありません。彼らが形を変えてアフガニスタンで活動を続けていることは明らかです。先日、アフガンの基地で死亡したCIA職員2人が、かつてXe社の社員だったという記事がありました(記事はこちら)。そのうちの1人は元海軍特殊部隊シールズの隊員でした。CIAとXe社の蜜月の関係はまだ続いているのです。