米軍がバイオ燃料へ転換を促進

2010.4.2


 military.comによると、バラク・オバマ大統領はアメリカの石油依存を終わらせ、バイオ燃料を使用することで米軍がこの努力をリードするという演説を行いました。

 この努力において、米軍の航空機と車両は従来のJP-8燃料と動物性脂肪や植物から作られたガソリンとの混合燃料を使います。大統領はバイオ燃料を用いたF/A-18を「グリーン・ホーネット(Green Hornet)」と呼び、数日後の「アースデー」に最初の飛行を行うと言いました。また、陸軍と海兵隊がバイオ燃料の混合燃料で車両を走らせるテストを行ってきたと言いました。空軍は既にバイオ燃料で航空機の飛行テストを行っています。3月35日、A-10C「サンダーボルト」は、カメリナとよばれる雑草のような植物から作られた合成燃料を用いてイグリン空軍基地を離陸しました。カメリナは僅かな水で育ち食用としては使われません。コーンは食用としても使われるため、これを使う食品の価格を上げてしまいました。空軍は年間に約24億ガロンの燃料を使います。空軍は2012年までにすべての航空機が代替燃料を使うように認め、本土の航空隊の半分が2016年までに実際に代替燃料で飛ぶようにする計画です。オバマ大統領は「我々の軍指導者は代替燃料を使うこと、エネルギーの使用を減らし、輸入石油への依存を減らし、我々がより省エネを行うことが安全保障の急務だと認めています。それで、海軍は次の10年間で、すべての航空機と車両、船で代替燃料を50%使うという目標を定めました。国防総省はエネルギー効率を高めるために、今年単独で27億ドルを投じました」と述べました。

 記事には海底油田の採掘についても書かれていますが、それらは省略しました。

 「グリーン・ホーネット」はF/A-18の名称「ホーネット」に、バイオ燃料のイメージ色「グリーン」を足したものですが、往年の人気テレビドラマ「グリーン・ホーネット」にひっかけているのでしょう。このドラマには、かのブルース・リーが探偵の助手の役で出演していたことでも知られます。それはともかく、米軍は大量の燃料を使う組織です。もともと、アメリカ人は省エネの意識が低い上に、国防のような重要事項で燃料をケチるべきではないと考えています。しかし、しばらく前から、米軍がバイオ燃料の研究をしているという話が報じられていました(過去の記事はこちら)。また、こちらは見込みはないのですが、石炭から石油を作る技術も研究しています(過去の記事はこちら)。米軍は代替燃料を使うことで石油依存を減らし、省エネをリードしようというわけです。これは環境問題に貢献するためでもありますが、軍事的には、石油だけに依存しない方がより安全だという判断だと考えられます。資源戦略では、常に資源の供給先をできるだけ多く持つのが常識です。資源は有限ですから、1つが断たれても、他から供給できるようにするのです。しかし、石油中心の時代には、数が限られている油田を奪い合うばかりでした。ここに代替燃料が加われば、1つ安心材料が増えることになります。前述の過去記事にも書かれているように、石油は値動きが激しく、戦費の高騰を招きます。代替燃料の価格が安定していれば、こうした心配もなくなります。なにより、石油依存が減れば、中東ばかりに目を向けなくても済むという利点もあります。そう考えると、軍事を考える上では、代替燃料への転換が米軍の活動やアメリカの国家戦略にどんな変化をもたらすかに着目することが大事なことが分かります。


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