マクリスタル大将が暴言で解任の危機

2010.6.23

 military.comによると、アフガニスタン駐留米軍を指揮するスタンリー・マクリスタル大将(General Stanley McChrystal)が、自らの政権批判発言により、解任の危機にさらされています。

 これは、アメリカの「Rolling Stone」誌に掲載された「The Runaway General(暴走する将軍)」という記事を巡る問題です(記事はこちら)。

 ホワイトハウスのロバート・ギブズ報道官(Robert Gibbs)は「過ちの重大さと大きさは深刻です」「すべての選択肢がテーブルの上にあります」と述べました。ロバート・ゲーツ国防長官(Defense Secretary Robert Gates)は、大将のコメントはアフガンでの戦いの注意を散漫にすると言いました。マクリスタル大将は火曜日に、「Rolling Stone」誌のインタビューで判断を誤ったと、公式に謝罪しました。その後、大将は大統領の命令で水曜日にアフガンからホワイトハウスに向かいました。彼は大統領と国防総省当局者に自分のコメントについて説明するとみられます。報道官は、オバマ大統領はマクリスタル大将の謝罪を認め、釈明するチャンスを受けるに足ると考えていると言いました。しかし、軍の指導者が公に最高指揮官(大統領)を批判することはなく、彼らがそうする時は、結果はけん責を越える傾向があります。ギブス広報官は、解任が近い将来にあることをほとんど疑いませんでした。「我々のアフガンにおける努力は、1人の人間よりも大きいのです」と彼は記者に何度か言いました。大将の将来は水曜日の会議の後にホワイトハウスから発表されます。アフガンの米軍当局者は匿名を条件に、マクリスタルは職務に留まることが許されるかについて語らなかったと言いました。ギブス報道官は、大統領がどれくらい怒っていたかを述べることを拒否しました。「もし、あなたがそれを見れば分かるでしょう」。マクリスタル大将は火曜日を、ゲーツ長官やリチャード・ホルブルック特使(Richard Holbrooke)など数人に謝罪することに費やしました。統合参謀本部議長マイク・マレン大将(Adm. Mike Mullen)は、マクリスタル大将に「深い失望」を伝えました。ハミド・カルザイ大統領(President Hamid Karzai)は、マクリスタル大将を、この戦争の「最良の指揮官」と呼び、オバマ大統領が彼を交代させないことを望みました。

 記事では、マクリスタル大将がオバマ政権が送る準備をしていたのよりも多くの兵を求めた時、大統領が買い手のつかない立場(an unsellable position)」を手渡したと不平を言いました。「私は時間が骨の折れることを見出しました」。マクリスタル大将はまた、ホワイトハウスが彼の外交上のパートナーに選らんだカール・アイケンベリー大使(Ambassador Karl Eikenberry)が裏切ったと言いました。彼はアメリカの努力が失敗した場合に備え、自分を守るためだけにカルザイ大統領の信頼性を疑ったことを批判しました。

 火曜日にマクリスタル大将は声明を出しました。「私はオバマ大統領と彼の国家安全保障チームに多大な敬意を持ち称賛します。そして、文民の指導者とこの戦争を戦う兵士のために、成功した結果を確実にするために専念しています」「私はこの記事について心からの謝罪します」「それは間違った判断を反映した誤りで、決して繰り返されるべきではありません」。


 急転直下、アフガン情勢に大きな変化がありました。マクリスタル大将の発言が問題となっています。

 問題のインタビュー記事はまだ読んでいないので、この記事に紹介されたことがすべてなのかどうかは分かりませんが、このタイミングでの指揮官交代は非常に不適切です。しかし、やむを得ないような内容なのでしょう。これはゆっくりと記事を読んでから考えてみます。

 増派の兵数を減らされたことが不満なのは、指揮官として不満でしょうは、言うべきではないことです。マレン統合参謀本部議長も、この件については、大統領の結論が出たときに議論の時は終わったと宣言しています。兵数を増やせばアフガン問題を解決できるかと言えば、そうではありません。しかし、軍人は「成せば成る」と教育されているので、退くことは考えたがりません。それが悪い方向に出たのが、今回の事件です。アイケンベリー大使との確執は想像できる範囲です。かつて、マクリスタル大将は「いま増派しないとアフガンはタリバンの手に落ちる」と述べ、駐アフガン大使のアイケンベリーは「増派はアフガン政府のアメリカ依存を高めるだけだ」と意見が激突したことがあるのです(関連記事はこちら)。

 マクリスタル大将は冷静な人物だと思っていたのですが、愚痴を言いたくなる時もあるのでしょうか。

 本当は、このようなドタバタ劇を演じている場合ではないのですが。対テロ戦は最初から勝利が危うい戦いなのに、米政府は十分に結束していません。


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