military.comが、以前に紹介したイラクの米軍基地のゴミ焼却により健康被害を被った兵士の訴訟問題に関して、続報を報じました。
44歳のイラク帰還兵ティム・ワイモア(Tim Wymore)は、脳に3ヶ所と目に1ヶ所の病変を持っています。彼は血液疾患と、結腸のほとんどを切除したことから食道と腹部に損傷があります。彼は辛うじて立て、それからは杖の助けを借りるのみです。復員軍人援護局は、ワイモアの健康問題が戦争に起因すると認めますが、彼の状態がまだよくなるかも知れないと考えています。このため、復員軍人援護局はワイモアの障害を回復不能と宣言していません。その結果、彼の家族は様々な給付金を得る資格がありません。それらには、彼の妻のための医療保険、3人の息子の大学の学費を含みます。ワイモアは自分が死んで、自分の死が直接兵役に関係しない限り、復員軍人援護局が遺族給付金を払わないことを心配しています。「私は宣誓をして、自分に求められたことをしました」「いま、私は軍が彼らの役割をする時だと思います。私は彼らと戦うのに疲れています」。ワイモアの妻シャナ(Shanna)は、フルタイムで彼を看護するために仕事を辞めました。目下、夫婦は彼の社会保障と軍の障害給付金とその他の寄付で生存しています。
訴訟には経済的な見返りの保証がありません。復員軍人援護局は、2012年にワイモアの障害の再評価を行います。夫婦はそれが手遅れになることを恐れています。シャナは「我々はさらに半年間を考えたくないほど早く、悪化しました」と言います。
ワイモアは高校を卒業した後、3年間空軍で勤務しました。シャナとは基礎訓練を終え、最初の配属までの間に知り合い、2週間後に結婚し、25年間一緒でした。現役を終えるとワイモアはミズーリ州軍に加わりました。第131飛行隊に勤務し、トラックやフォークリフトを運転して、航空機から荷物を下ろしました。民間人になると、彼はツールや金型の制作者として高給を得ました。シャナは産業用のツールや消耗品を売り、コンビニでパートタイムで働いたり、不動産仲介人をやりました。50歳で引退するまで、夫婦は順調でした。
ワイモアは自分がイラクに派遣されることになり、驚きました。彼の部隊では5人だけが派遣されました。彼はバラド基地に配属され、毎週何回か、基地のゴミ焼却用穴に、テントからエアコンまで捨てるように命じられたものを、トラックに積んでその端まで行きました。フットボール競技場5個分の長さ、300フィート(91.44m)の深さを持つ穴は絶え間なく黒い煙を出しました。「彼らは我々に紙マスクさえ与えませんでした」。煙は広大な基地にわたって残存しました。ワイモアは彼が夜にトレーラーの中で煙を吸引したと言います。いまでも、ワイモアは苦々しい金属的な味から逃れるために、朝、シャワーの中に口を開けて、座ります。半年間の派遣の間、ワイモアは頭痛、胃痛、呼吸困難を訴えました。「誰もが同じ薬をもらいました」「イブプロフェン800mg」。2005年に彼がイラクを去るとき、彼はゴミ焼却用穴で被爆したことが医療記録に含まれるように要求しました。
帰国すると、彼の健康は衰えました。彼は胃の感染症を除去するために緊急手術の必要があり、肺炎と闘い、入退院を繰り返しました。彼は仕事中に意識を失いようになり、仕事ができなくなりました。約1年半前、夫婦は復員軍人援護局に援助を求めました。医師は、彼はPTSDを被っていると判断しましたが、身体的な問題については答えませんでした。彼らはより多くのテストを命じました。しかし、誰も決定的な診断をすることができませんでした。
類似する問題を抱えている元軍人の実例については省略します。
何人かの兵士の代理人であるニュージャージー州の弁護士ジョン・ゲルマン(Jon Gelman)は、30,000~40,000人の退役軍人が、ゴミ焼却用の穴による影響を受けているかもしれないと言います。
訴えられた民間軍事企業は、兵士による訴訟を棄却させようとしました。military.comの別の記事によると、42州で行われている43件の訴訟を監督するロジャー・W・テトス連邦判事(Judge Roger W. Titus)は、ハリバートンシャを含む軍請負業者は、廃棄物を解放した穴で燃やしたときに、兵士が毒物排出に曝され、水が汚染されたと主張する訴訟を受けなければならないと決定しました。
この問題を最初に知ったのは昨年でした(過去の記事は1・2)。あらゆる廃棄物を一つの穴に捨てて燃やすという、米国内なら逮捕されるような廃棄物処理をやっていたことに、イラク戦の実態を見た気がしました。イラク人の健康問題など考えずにやったことが、米兵に跳ね返ってしまったという皮肉です。 しかも、問題が起きてから何年も経つのに、まったく解決されていません。
何でも一緒にして燃やしたから、健康被害が出ても原因を特定できないという皮肉。イラクのファルージャ付近で、先天性の障害を持つ新生児が多数生まれたという事件もありました(記事はこちら)。いずれも原因がはっきりしていません。
こうした問題を解決するには、軍隊が国外で活動する場合、国内と同じか、国際的に認められた環境基準を守るような法整備をするしかありません。日本でも米軍基地が返還される場合、現状復帰の責任は日本に任されています。米軍は無制限に化学物質を基地内で使い、土壌を汚染してしまいます。しかし、こうした問題は戦争という大きな問題の前で軽視されがちです。これは赤十字社が中心となって対応すべき問題かも知れません。