パキスタン軍誤爆事件の報告書が公開へ
2011.12.24
修正 2011.12.25 13:40
military.comによれば、先月25日、パキスタンとアフガニスタン国境付近で、米軍のヘリコプターがパキスタン領内を攻撃し、パキスタン兵24人が死亡した事件で、スティーブン・クラーク准将(Brig. Gen. Stephen Clark)がまとめた調査報告書が公表されるのに先立ち、その要旨の説明が行われました。報告書の中で、米軍は事件が起きた責任を認めました。
クラーク准将はパキスタンが調査への参加を拒否したため、報告書は不完全だと認めました。
現地時間11月25日深夜、米軍のCH-47チヌーク・ヘリコプターはパキスタン国境沿いのアフガンの村の近くで約120人の兵士を地上に降ろしました。暗く、月がなかったので、兵士たちは彼らの目的地へ向かうために、山を通り抜ける急勾配で危険な小径を進むのに暗視ゴーグルに依存しなければなりませんでした。兵士たちは情報の稜線から重機関銃と迫撃砲の攻撃を受け、米航空機にパキスタン軍の国境基地を攻撃させた緊急命令と誤解の連鎖を起こさせました。
地上の米軍指揮官はすぐに、この地域にパキスタン軍がいないことを確認するために司令部を呼び出しました。指揮官は何も関知していないけども、それを二重にチェックすると答えました。現地の指揮官と兵士は、明確に「該当なし」との答えを聞きました。「彼らの心構えすべては、高地を占拠して彼らを攻撃している敵の武装勢力にありました」。そこで、現地指揮官は航空支援を要請しました。その夜、上空にはMC-12偵察機が1機、AC-130ガンシップが1機、F-15Eが2機、AH-64攻撃ヘリコプター2機がいました。地上の指揮官は的を驚かせるために、アフガン戦争で一般的なテクニックである「武力誇示(show of force)」を要請しました。F-15Eはアフターバーナー全開で約560キロノットの速度で山の上で大騒音を立て、フレアーを投下しました。AC-130もフレアーを投下しました。少しの間、照明は夜を昼間のように照らしました。このデモンストレーションの時点で、「この地域に同盟軍がいないことは全員の心に疑いがあってはなりません。それは武力の誇示を意図しています」とクラーク准将は言いました。
しかし、攻撃は止みませんでした。機関銃と迫撃砲の攻撃はとても正確でした。米軍指揮官は敵は彼の兵士の赤外線ビーコン(裸眼では見えない発光装置)を狙うために暗視センサーを使っていると考えました。指揮官は部隊に赤外線ビーコンをオフにするよう命じました。武力誇示の後に攻撃が続いたので、米軍指揮官はAC-130とアパッチに機関銃の発射地点を攻撃するように命じました。パキスタン軍は航空機自体には攻撃していませんでしたが、攻撃者は米軍地上部隊に攻撃を続けました。米軍が空から攻撃を始めるとすぐに、パキスタン軍指揮官がISAFの対応部署に攻撃を止めるように必死で要請を始めました。パキスタン軍は彼らがいる場所を明確に述べなかったので、ISAFは混乱しました。「彼らが攻撃しているのだから、それがどこかは分かるはずです」とクラーク准将は言いました。この根本原因はこの調査の範囲外ですが、両者間の関係における本当の要因はそのままだと、彼は言いました。
米軍の空襲が続く中、ISAF担当官はパキスタンの対応部署に米軍の正確な位置ではなく大まかな位置を教えるよう命じられました。正確な座標を与える代わりに、彼は正しく作られていないコンピュータ上の地図を見ました。彼は地図上の線を読み誤り、アフガンの地域の境界線とパキスタンとの国境の交差する地点を答えました。ISAF担当官は地域の境界線ではなく、国境と交差する道路を見ていると考え、パキスタン軍の位置を実際に交戦が行われている場所から14km北の位置だと答えました。ISAFとパキスタン軍当局が何が起きているかを理解し始める時までに、米軍機は重機関銃の銃座3ヶ所と国境の基地2ヶ所を攻撃していました。司令部から米軍機がパキスタン国境基地を攻撃していると告げられ、航空機は攻撃を中止しました。
越境事件に関係なく、米軍は本来予定された任務を続け、目指した村に入りました。彼らは長老に会い、相当な数の武器の貯蔵場所を見つけました。
この事件は過去に2回紹介しました(記事1・2)。
すでに、両軍の関係悪化が修復されていないという記事(記事はこちら)、この報告書に対してパキスタン軍が自軍の誤りを認めないという記事も出ています(記事はこちら)。時間がないのですが、これらも要約を紹介したいと思っています。メイヤー伍長の名誉勲章の問題やその他にも興味深い記事があり、できるだけすべてを紹介したいのですが、時間が足りません。明日、できるだけ掲載したいと思っています。
この報告の要約を読んで、まず両軍が同じ地図を使っていないことに根本的な問題があるように思われました。軍用の地図には砲撃や空爆に使う座標が示されています。同盟軍が同じ座標体系を用いないと、こういう緊急事態に対処できません。これがアメリカとパキスタンが協力態勢と呼ぶものなら、そもそも十分なものではなかったのです。米軍はいつもは行っている作戦行動の通知もせずに兵を出し、パキスタン軍は越境してくる正体不明の敵に対して当然のように攻撃を行いました。どちらのミスが大きいのかと言えば、ISAFであり、該当する部隊である米軍に非があります。
また、パキスタン軍が基地の位置を連絡済みだったと抗議していることに回答していないように思われます。
海外任務が増える自衛隊は、この事件の教訓を肝に銘じるべきです。そして、政治家は安易に自衛隊を海外に派遣しようと考えるべきではありません。現地国との連携の不足が、意図せずして重大な結果を引き起こすのです。
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