Wikileaksの虐殺ビデオが短編映画に

2011.4.24


 military.comによれば、4月24日にニューヨーク市で開催されるトライベッカ映画祭(the Tribeca Film Festival)で、Wikileaksが公表した、いわゆる「Collateral Murder」ビデオと事件後にこの事件に関与した兵士を扱った映画「Incident in New Baghdad」(リンク先で映画の予告編が見られます)がプレミア上映されます。

 ジェームズ・スピオネ監督は、イーサン・マッコード元技術兵(former Spc. Ethan McCord)が、この日にイラクで見たことで反戦に転じたとしても、この22分間の短編映画は軍隊に反対する映画ではないと言いました。「私が考えようとしたものは、彼がどのように踏み込んで、通り過ぎていったかです」とスピオネ監督は言いました。

 「これは彼にとって転回点でしたが、それだけではありませんでした」「あなたは、この大事件を見て『イラク人が自分に声援を送っている』というところから『俺はただ2ヶ月間生き延びて、家に帰りたいだけだ』と考えるようになります」。スピオネ監督は、マッコードは2007年7月にWikileaksが公表したアパッチヘリコプターの現場に急行した時に、すでに彼の戦争観を変えていたと言いました。ジャーナリストと彼の運転手を含む数人の民間人を殺し、2人の子供を負傷させた攻撃は、彼に忍耐の限度を超えさせました。彼のハートはそれ以上耐えられませんでした、とスピオネ監督は言いました。

 映画の中のインタビューで、マッコードは彼が現場に到着したとき、RPGが死体の近くにあったのを見たことも思い出しています。「私は兵器が見えるように(ビデオの)一部を拡大しています」とスピオネ監督は言いました。兵士がその時に撮影した写真も武器を示していましたと、彼は言いました。多くの人はロイター社員と彼らと一緒の民間人の死を、武器が存在したばかりに「戦場の霧」のせいにしました。次に、アパッチのクルーが負傷者を助けようとして止まったバンを攻撃したことは、もっとやっかいでした。

 「Wikileaksのジュリアン・アサンジ(Julian Assange)はビデオが公表されたときのインタビューで何度も、初期の交戦ではなく、バンに対する交戦は正当化できないから、それを「付帯殺人(Collateral Murder)」と呼ぶ理由だと言いました。バンの周囲にはどこにも武器が見られず、バンから出てきた人たちは明らかに重傷の男たちを助けようとしていた、と彼は言いました。「これは、これは多くの人を動転させたと私が考えるビデオの一部です。私は、あなたの心を生理的なレベルで本当に打つ部分です」と彼は言いました。子供たちはバンの中で負傷し、アパッチのクルーからは見えませんでした。「彼らは明らかに子供たちを見ていません」とスピオネ監督は言いました。ビデオの中で、クルーの1人ははっきりと「戦場に子供を連れてくればこうなる」と言っていますが、スピオネ監督はこの言葉がクルーの罪悪感、防衛メカニズムから来ているようだと言いました。

 2010年4月にビデオが公開されてから、すでに陸軍を辞めていたマッコードは、攻撃で負傷した人たちと家族を失った人たちに謝罪する公開書簡を書きました。マッコードはその時点でMilitary.comに、原因は兵士よりも交戦規定の緩みにあったと言いました。彼は、前後関係なしに、なぜアパッチのクルーがやったように対応したのかを説明できたかも知れない、地上でどこででも起きていることを示さずに提示されたとして、ビデオを批判しました。「私はビデオが公開された時に動転しました。私は彼ら(Wikileaks)が間違った人たちを攻撃していると思いました」と、彼はMilitary.comに言いました。マッコードは第16連隊第2大隊B中隊に配属されていて、アパッチは第227航空連隊に所属しました。

 ビデオで、マッコードは負傷した子供の1人を治療させるために運んでいるのが見えます。スピオネ監督は、彼が「Incident in New Baghdad」が、他の地上部隊のメンバー、航空クルー、地上のイラク人にまでインタビューしていて、この日の攻撃により深い見解をもたらすかも知れないと期待していると言いました。「私はこの事件で起きたことについて多くの視点を持つようにしたかったのです」「私にとって、それは現代の市街戦の縮図のような出来事を考える驚異的な機会です」「私は、そこにいたことがない限り、アメリカ人が戦争について、とてもぼんやりとした理解しかないと思います。「我々は鈍器のような戦争を理解する必要があります」。


  25日(月曜日)に記事を更新できないかも知れないので、今日やっておきます。

 この事件については、何度も報道されていますし、当サイトでも取り上げたので、事件に関する説明は省略しました。(過去の記事はこちら 

 予告編を見た感じは良好ですが、全体を観賞していないので、内容は記事以上のことは分かりません。しかし、日本でもミニシアターなどで上映される可能性があります。最寄りの映画館で上映されないか、ぜひチェックしてみてください。短編映画でも、こういう作品は正確な日本語字幕をつけて国内に紹介されるべきです。私もこの作品の公開に協力したい気持ちです。日本での公開を考える配給会社の皆さん、ぜひとも当方へ連絡ください。

 このように映画がイラク戦争を取り上げる時期が来ました。まずは、その流れはドキュメンタリー映画から始まり、今後は劇映画も増えてくるでしょう。現実の問題を扱う劇映画の場合、事件を評価し、最適のストーリーを構築するまでが大変で、作品が完成するまでにはかなりの時間がかかります。

 これまではテレビ映画の「セイビング・ジェシカ・リンチ」みたいな作品しかありませんでした。中には「大いなる陰謀」のような啓発的な作品もありましたが、この作品には「説教くさい」といった理解しがたい批判が与えられました。しかし、今後はイラク戦争の問題点を描いた劇映画が徐々に増えてくるでしょう。


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