カダフィ大佐がゲリラ戦の準備中

2011.9.2


 BBCによれば、逃亡中のカダフィ大佐は音声メッセージで長期間のゲリラ戦をする準備ができていると言いました。それは1日で2回目の所在不明の大佐からのメッセージでした。

 シルトのカダフィ軍を包囲している反政府軍は降伏を協議するために1週間の猶予を与えました。西欧の指導者は暫定政権に敵との和平に携わるように求めました。63ヶ国の代表がパリでリビアについて議論するために会合を持ちました。

 「人々は植民地主義と戦っています」と彼はシリアに拠点を持つアル・レイ・テレビ(al-Rai television、Al-Ray TVとも書きます)が放送した音声メッセージで言い、それは約10分間続きました。「自由のための莫大な犠牲が必要です。裏切り者は終末を迎え、NATO軍は崩壊し、NATO軍への裏切り者の忠誠心は崩壊するでしょう」。メッセージは急に終わり、愛国的な音楽へ切り替わりました。数時間後、彼がリビア侵略と呼んだものに対する「長く、長く引き延ばされた戦い」の用意ができていると言った2回目のメッセージが放送されました。「人々は神がリビアに与えた石油とリビアの富を奪うことを許しません」と彼は言い、2,000部族がリビアを守る準備ができていると言いました。「ギャングとゲリラ戦、至るところにいる敵を打倒するためのすべての街における大衆の抵抗を覚悟してください」。彼は支持者の手にある彼の生誕地、シルトがいまやリビアの首都であると言いました。

 ダマスカスに拠点を置くアル・アリ局は、繰り返しカダフィス(Gaddafis)から宣伝メッセージを放送しました。水曜日に、同局は大佐の息子、サイフ・アル・イスラム(Saif al-Islam)の、戦いを続けると誓う音声メッセージを放送しました。しかし、もう1人の息子、サーディ(Saadi)は別のチャンネルから放送されたメッセージで、反政府派と流血を避けるための交渉をしていると言いました。

 反政府軍が最後に残された街に接近し、街が大佐に従う時、特派員はカダフィの側近たちが分裂しているように見えると言いました。

 アルジェリアのメディアはカダフィ大佐もアルジェリアへ逃げようとしたと報じました。エル・ワタン紙(El Watan)によれば、大佐はアルジェリアのアブデルアジズ・ブーテフリカ大統領(President Abdelaziz Bouteflika)とガダミス(Ghadamis)から話そうとしましたが、大統領は電話することを拒否しました。

 ワシントン・ポスト紙は少し違ったことを報じています。

 反政府軍広報官、アーメド・バニ大佐(Col. Ahmed Bani)は木曜日に、9月10日までに武器を置かなければならないと言い、街の住民がリビアの新しい現実を理解する時間を与えました。

 孤立したシルト、バニ・ワリド(Bani Walid)とセブハ(Sabha)に至る砂漠の回廊を除くと、首都トリポリを含めて国の大半は反政府派が支配しています。シルトは電気と水が供給されていませんが、住民が国の大半の支配を失ったことを知っているかどうかは不明だと、バニ大佐は言いました。

 しかし、もう1人の反政府当局者は最終期限の延長を確認しておらず、カダフィ派に対する圧力のかけ方について反政府指導層の意見の相違を強調しました。暫定政権の内務副大臣、ムスタファ・サガズリー(Mustafa Sagazly)は、そのような延長を知らされていないと言いました。「時は我々の側にあり、時間が過ぎるほど、私たちは強力に、彼らは弱くなります」「私たちはさらに数日間は我慢できますが、この戦争の状況を終わらせなければなりません」。

 トリポリの南東、タヒュナ(Tarhouna)で捕虜になったハミス旅団の兵士は、先週金曜日にカダフィ大佐に会ったと言いました。17歳のアブドルサルマン・タハラ(Abdulsalaam Tahara)は、南に向かうトヨタのランドクルーザーの車列の中にいる妻のサフィア(Safia)と娘のアイシャ(Aisha)、サイフ・アル・イスラム(Saif al-Islam)と一緒で、緑色のシャツとズボン、ターバンを着用したカダフィ大佐がトリポリ郊外を離れるのを見たと言いました。

 カダフィの妻、娘、2人の息子、ハンニバル(Hannibal)とモハメッド(Mohammed)と彼らの子供たちは月曜日にアルジェリア国境を越えてアルジェリアに入りましたが、アルジェリア当局はカダフィ自身に避難を認めていないと言いました。

 タヒュナの反政府軍指揮官、アブデル・ラザーク大佐(Col. Abdul Razzaq)は、バニ・ワリドの避難民から、繰り返して、サイフ・アル・イスラムともう1人の大佐の息子で、恐れられた国家安全保障責任者のムタジン(Mutassim)が水曜日頃にバニ・ワリドにいたという信頼できる情報を受け取ったと言いました。


 BBCの記事で、フランスのリビア資産凍結解除の部分は省略しました。

 交渉期限が延長されたことで、シルト戦が避けられる可能性が出てきました。この理由が西欧諸国からの和平を求める要請に応えたのか、交渉がまとまりかけているので、さらに時間が必要なのかも知れません。私は後者の可能性が高いと思っています。

 以前に推測したカダフィ一家の逃亡経路ですが(過去の記事はこちら)、裏づける情報が出てきたことに驚かされています。これはGoogle Earthを使った分析で、現地の情報を直接得たわけではありませんでした。しかし、冷静に考えれば、誰でもこの結論に至ったはずだと、私は考えます。19日付けの記事で、米当局者がカダフィ一家がチュニジアへ逃げようとしているらしいことを紹介しました。これは電話の盗聴による見解でしょう。この時点ではチュニジアへの打診が確認されていて、その後に、アルジェリアに打診したということかも知れません。

 バニ・ワリドからガダミスまで約700kmとして、月曜日までにはアルジェリア国境まで、時間的に十分に行けます。

 カダフィ大佐と息子のサイフ・アル・イスラムとムタジンは一緒かも知れません。彼らは南部勢力をまとめられるかどうかを考えているのでしょう。カダフィ大佐自身がどこにいるかは不明ですが、私はアルジェリアにいる可能性が十分にあると考えます。息子2人もいまはアルジェリアに入国したかも知れません。アルジェリア政府は彼らが第三国へ行くことを条件に入国を認めた可能性があります。

 サイフ・アル・イスラムはすでにトリポリいなかった時点でも市内を散歩したと声明を出しています。彼らの声明はもはや意味がありません。ゲリラ戦はほとんど不可能です。



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