放尿事件の処罰が拡大か?
military.comによれば、米海兵隊は死体に排尿したビデオに写っている海兵隊員4人全員が特定され、2人が尋問を受けたと発表しました。
当局者は2人の男性が不穏な映像について海軍犯罪調査部の自問を受けましたが、拘束はされていないといいました。匿名を希望する当局者は、ビデオ映像にみられる海兵隊員は第2海兵連隊第3大隊の狙撃部隊の者で、尋問を受けた2人は現役兵だと言いました。他の2人を探し出すのがより長くかかったのは、彼らがキャンプ・ルジューヌ基地から転属されたためとみられると当局者は言いました。しかし、米軍は4人全員を特定したことを確認しました。第2海兵連隊第3大隊は昨年3〜9月にヘルマンド州に派遣され、ビデオはその期間に撮影された可能性があると当局者は言いました。
ビデオの中の海兵隊員は、敵戦闘員の死体を尊厳を持って扱うと定めるジュネーブ条約と統一軍規法典に違反しているため、軍事裁判にかけられる可能性があります。
調査官は、場面を撮影した者を含めて、撮影行為に関係したその他の者を特定して尋問しようとしています。その人は多分、仲間の軍人でしょうと軍当局者は言いました。彼は軍当局は関係する部隊の指揮官にも尋問しようともしており、指揮の不備が兵士の不適切な行為を奨励したり、導いたと決定されれば、それらの指揮官は処罰されると言いました。
この記事で重要なのは、処罰がビデオに写っていない関係者にも及びそうだということです。どの道、写っているのが誰かは特定されたはずで、そればかり報じている国内メディアの態度は理解できません。
撮影した者も同じ行為をやっている可能性があり、現場にいても死者の冒涜を止めなかった点で問題があります。さらには指揮系統の問題が問われます。昨年末に発覚した中国系米兵のいじめ自殺事件(関連記事はこちら)で、いじめには関係していない中尉と2等軍曹も起訴されたのと同じで、積極的に事件に関与していなくても、何もしていなかったということで管理責任が問われるわけです。
海兵隊はこの事件が彼らの価値観に合致しないと主張しますが、軍人教育の中で「敵に情けはいらない」とか「敵を死体袋に詰めて親元に送り返してやれ!」といった海兵隊精神が、教官から訓練中の新兵に吹き込まれます。それが現場でちょっと崩れると、こうした問題が起きるのです。余談ですが、敵の死体を袋に入れて敵国に返却するのは合法です。しかし、こうした侮蔑的な表現は兵士に、敵の死体をぞんざいに扱ってよいのだという意識を抱かせます。さらに、若者たちは手っ取り早く手柄を立てて、自分たちのコミュニティに報告できたらよいと考えるものです。「アフガンでテロと戦ってきたぜ」と学生時代の同級生に報告するのは、海兵隊員にとって快感でしょう。
特に、対テロ戦では、狙撃部隊は武装勢力ではない者を狙撃して、死体の傍に武器を置いて悪者に見せかけるという不祥事を繰り返してきた前科があります。ビデオに写っている3人も手押し車の近くに倒れていたことから、テロリストではない農民だった可能性があります。そこまで調べ上げて処罰するようなら、海兵隊にもまだ期待が持てるかも知れません。
この事件に第一に関係する法令は統一軍規法典の「第893節 第93条 残酷な行為と虐待」と思われます。残酷な行為、抑圧、虐待を行った者に適用され、軍事裁判が命じる処罰を受けると定められています。この条項がある以上、より罰が軽い「指揮官による処罰」は適用されず、軍事裁判が開かれる公算が高くなります。どの程度の罰かは、軍法の専門家でないと分かりません。過去に執行された処罰には一種の「相場」があるはずです。Wikipediaに、死体損壊には最高で死刑が適用されるという記事を見つけましたが、最高刑が死刑なら統一軍規法典は「死刑」と明言するのが普通で、「軍事裁判が命じる処罰」はもっと軽い処罰を指します。もちろん、事件の規模が極めて大きい場合は死刑もあり得るでしょう。実績として、太平洋戦争中には日本兵の死体を損壊して、土産物として持ち帰った米兵に対して、米軍は批判はしたものの積極的に罪を問いませんでした。よって、あまり重たい刑はないと思われます。
しかし、前に指摘したように、レオン・パネッタ国防長官がこうした問題に厳しいことは裁判にも影響があると考えなければなりません。軍法は民間の法律と違って、軍隊の規律を維持するためのものであり、一般の裁判よりも各軍の長官や国防長官の影響力が大きいのです。犯人たちは今ごろ、軍法専門の弁護士に対処を相談していることでしょう。インターネット時代には映像の影響が大きい点も、犯人たちに不利に作用するはずです。極度に重たい処罰ではない者の、考えられる処罰の中で一番上あたりが適用される可能性が高いことになります。
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