事件をほとんど記憶していないベイルズ

2012.3.21


 military.comによれば、ロバート・ベイルズ2等軍曹(Staff Sgt. Robert Bales)の弁護士、ジョン・ヘンリー・ブラウン(John Henry Browne)は、ベイルズが事件の夜の記憶がほとんどないと述べたと言いました。この声明は、ブラウン弁護士がベイルズに面会した後のものです。

 ブラウン弁護士と弁護団のメンバーは今週さらにベイルズと面接をする予定だと言いました。

 一方で、銃後でのベイルズのトラブルについてさらに詳細が明るみに出ました。記録は彼が十年近く前に、証券詐欺で有罪になり、仲裁裁定により150万ドルを負ったことを示します。裁定はオハイオ州コロンバス市の男性が、2003年にベイルズが株式仲買人として働いていている間に、彼と彼の妻を騙したと申し立てたことに起因しました。

 ブラウン弁護士は弁護を始めるために、月曜日に初めて格子越しに依頼人と面会しました。彼はベイルズが銃撃の夜に「起きたことについて一部を記憶している」と述べたと言いました。「彼は事件前と事件後の少しの記憶があると言いました。その間の記憶は非常に僅かです」。銃撃についてベイルズが何か記憶しているかを尋ねると、ブラウン弁護士は「いいえ」「私は私はまだ彼とそこまで話していません」とAP通信に答えました。CBSの初期のインタビューで、ブラウン弁護士はベイルズが銃撃を憶えていないと明確に言いました。

 ベイルズはフォート・レヴェンワース基地(Leavenworth)に先週金曜日に到着し、独房に監禁されています。彼は「すでに公判前の拘禁ルーチンに溶け込んでいます」と刑務所の広報官、レベッカ・スティード(Rebecca Steed)は言いました。ルーチンにはレクリエーション、食事、居住区域の清掃を含みます。スティードは弁護士との面会が週の公判に完了したら、ベイルズは通常の尋問が再開されると言いました。

 ブラウン弁護士は彼とベイルズが軍刑務所で3時間以上面会したと言いました。ブラウン弁護士は兵士がアフガニスタンの地上にいるかのようなとても心を打つ説明をしたと言いました。「あなたや私はそれを読んだことがあるでしょう。しかし、それはそこにいた者から聞くと、まったく違っています」「本当に心を動かされました」。

 弁護団には軍の弁護士、トーマス・ハーリー少佐(Maj. Thomas Hurley)を含みます。

 ベイルズの妻、キャリリン(Karilyn)は犠牲者の家族に対する哀悼の意図を表明し、何が起きたのかを知りたいと月曜日に言いました。彼女は家族と親類は非常に悲しみ、ニュース報道で彼らが見聞したものは「完全に私が知り、敬服する男性のキャラクターではありません」と言いました。

 法廷の記録とインタビューは、ベイルズがイラクとアフガンの4回の派遣で善行章を受けたことを示します。

 彼は近年いくつかの問題にも直面していました。フロリダの投資の仕事は失敗しました。彼のシアトルの家はもう1つの支払いに困窮して接収されました。彼は昇進に失敗しました。さらに2003年の証券詐欺の判決で150万ドルを負っていました。全米証券業協会はベイルズ、別の男と彼の会社が詐欺、受託者義務違反、過剰売買、許可されない取引と不適切な投資に関わったことを見出しました。

 記録はコロンバス市のゲイリー・ライブシュナー(Gary Liebschner)が、ベイルズが株式仲買人だった2000年に訴訟を起こしたことを示します。オハイオ州のWCPO-TVはライブシュナーの妻が、夫が病気になり、ベイルズに医療費を支払うために株を売るように依頼したのに、収益を受け取らなかったというのを引用しました。仲裁委員会は、ベイルズ、マイケル・パターソンと「Michael Patterson Inc.」に補償的損害賠償として637,000ドル、懲罰的損害賠償として637,000ドル、弁護士費用とその他の手数料数千ドルとして216,500ドルを個人及び合同の支払い責任があると宣告しました。委員会はベイルズの関与は「詐欺的で悪意がある」と見出したので懲罰的損害賠償を認めました。ベイルズは答弁書を提出せず、弁護士を雇ったり、オハイオの法廷に出廷しなかったことを記録は示します。裁判の約半年後、9/11のちょうど2ヶ月後にベイルズは入隊しました。

 1998年、ベイルズはベイトナビーチでのアルコール所持で65ドルの召喚状を受けました。彼は罰金を払わず、法廷で自己弁護もしませんでした。逮捕状が発行されましたが、あとで期限切れになりました。


 ベイルズに事件の記憶がないらしいことは、すでに報道でも触れていましたが、今回は弁護士の口から明らかにされました。ただ、まだ面会の初期の段階であり、十分な情報交換はできていないと思われる段階ですから、記憶がない理由などは何とも言えません。

 ハーリー少佐はいわば国選弁護人です。軍の法務官が公正な裁判のために被告に民間弁護士がいる場合でも派遣されます。

 証券詐欺事件の内容は不十分です。会社が傾いていたので売却した株の代金を支払いに充ててしまったのか、そもそも売却ができなかったのか。その辺を知りたいところです。顧客と仲買人のトラブルはよくある話でしょうから、細かいことが分からないと何とも言えません。それでも、仲裁委員会の裁定は気になります。

 アルコール所持の件は無視してよい話でしょう。

 しかし、手がかりになりそうな話がこの記事に認められます。150万ドルの賠償が科せられたとはいえ、それはパターソンと会社との折半になるはずです。仮に3分の1がベイルズの負担として、彼の負担は50万ドルです。さらにその半分近くは懲罰的賠償金です。つまり、原告ではなく裁判所に支払うものです。もし、これが軍に入隊して、国に貢献することで、いずれ免除の裁定をもらえたとすれば、彼の負担は25万ドルを少し越える金額まで減ります。こんなところに志願の理由があったのかも知れません。

 そうだとすれば、今回の事件はすべてを狂わせる結果をもたらしたことになります。しかし逆に、彼が故意に事件を起こした可能性はなくなります。残る可能性は精神病と飲酒のいずれかです。

 ベイルズの動機や背景はまだ不明な部分が多く、結論は出せません。しかし、一つだけ明確になったことができたと言えそうです。


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