オスプレイは危険?安全?
military.comがMV-22B「オスプレイ」の安全性に関する記事を掲載しました。
6月14日のフロリダ州基地での事故、4月のモロッコでの死亡事故を含めると、統計はオスプレイがCH-46「シーナイト改良型」よりも若干危険なことを示します。しかし、海兵隊は数字はそれほど悪くないと言います。海兵隊広報官、リチャード・アルシュ大尉(Capt. Richard Ulsh)は「数は航空機を物語りません」「オスプレイは安全です」と言いました。安全性は10万飛行時間あたりの重大事故(Class A mishap)の数に基づきます。重大事故には航空機や200万ドルを超える政府資産の修理、隊員の死亡や不可逆的な障害があるかを含みます。
日本政府に提供した評価の中で、オスプレイはシーナイトの重大事故1.14(10万飛行時間あたりの事故数)に比較して、1.12と僅かに高い安全性を示しました。
「Stars and Stripes」の問いに対して、海兵隊司令部はモロッコの事故を含めた更新済みの統計を公表しました。その結果、数字は1.93へほぼ倍増しました。アルシュ大尉は、オスプレイは過去5年間に継続的に戦闘任務を行っており、数字はモロッコの事故で大きく歪められたと言いました。アルシュ大尉は統計は飛行時間が少ない航空機が重大事故を起こすと跳ね上がると言いました。過去10年間に、シーナイトは480,000時間飛行し、オスプレイは2007年以降115,000時間飛行しました。だから、1、2回の墜落はシーナイトには大きな影響を及ぼしません。「5年間の作戦飛行で、MV-22は2回の重大事故しか起こしていません。最新の事故は4月にモロッコで起こりました」「イラクとアフガニスタンでの戦闘任務を含めた過去5年間で比較的重大事故が少なかったという事実はこの航空機が安全で安定している証拠と考えられます」。
「The Dallas Morning News」のホワイトハウスと国防総省の担当だった元記者で「The Dream Machine: The Untold History of the Notorious V-22 Osprey」の著者、リチャード・ホイットル(Richard Whittle)は、オスプレイは2001年以前の、不十分な予算で設計、試作、テストされた機体の事故のために悪評を受けたと言いました。断続的に22年間オスプレイを取材してきたホイットルは、引き続いた墜落がオスプレイの評判を損ねたものの、再設計され、再テストされ、問題はすでに直されたと言いました。「10万飛行時間あたりの重大事故で評価すると、現時点でシーナイトはオスプレイよりも若干統計上の平均値は良好ですが、それはCH-46がエルビス・プレスリーの時代から飛んでいたからです」「シーナイトはオスプレイよりもずっと多く墜落しています。私の考えでは、今日、米軍にこれ以上の回転翼航空機はありません」。
記事は要点だけをまとめました。特に後半は国内の反対運動に関する説明で、既知の事柄が多いので省略しました。
この記事にある説明で沖縄が説得できるかと言えば、まず無理です。多分、この事故率では日本を説得できないという意見がアメリカで起こり、その答えを模索する動きが記事を書かせたのでしょう。しかし、そもそも、そういう視点が間違っています。
6月の事故(関連記事はこちら)を含めれば、数字はさらに悪くなり、多分2.0を越えます。それに飛行時間が増えることで、さらに数字が悪化する逆の可能性もあります。さらに、重大事故に至らない事故は公表されていないことも注意すべきです。
なにより、問題はすでに数字の範疇を越えています。航空機の機種の問題でもありません。いくら安全性を強調しても、長年にわたる米軍駐留に嫌気がさしている沖縄を説得することはできません。
ホイットル氏が言うように試作機の問題が解消されたかは疑問です。オスプレイは量産が始まったあとも重大事故を何度も起こしています。低率量産機の第1号は1997年に飛行を開始し、2005年には本格的な量産機の第1号が空軍に引き渡されました。海兵隊が実戦配備を決めるには、かなりのテストを行い、検討をくりかしたはずです。それでも墜落事故は起きているのです。そんな航空機を町の中にある普天間基地に配備することに賛成できるはずはありません。低空で揚力が失われたら、事故を回避するチャンスはほとんどありません。
米軍も米政府も事態を分かっていません。そして民主党は森本敏という最も沖縄が嫌がる人を防衛大臣に任命して、地元との交渉にあたらせようとしています。この無理解の構図は事態を悪化させる理由にしかなりません。
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