シリア:化学兵器使用の危機は去ったか
シリア軍がサリン弾を爆弾に詰めたというのは、昨年11月の話だったようです。私が時期を読み落としていて、最近の話と錯覚しました。
alarabiya.netによれば、シリア軍がサリンを500ポンド爆弾に搭載しているという偵察衛星の情報から、アメリカ、ロシア、イラク、トルコ、ヨルダンなどが警告を送り、危機は回避されたということです。
12月末、ロイター通信は、イスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ首相(Prime Minister Benjamin Netanyahu)が、シリアの化学兵器がイスラム武装勢力に渡る危険について、密かにヨルダンのアブドラ国王(King Abdullah)とアンマンで会ったとイスラエルの報道機関が報じたと伝えました。2つのテレビ局とイスラエルのニュースサイトが、匿名のイスラエル当局者が、ロンドンに拠点を置く、アラビア語日刊紙「Al-Quds Al-Arabi」の報道を認めたという話を報じました。ネタニヤフ首相の広報官は記事についてコメントを辞退しました。
イスラエルはアサド大統領の化学兵器がイスラム武装勢力やレバノンのヒズボラに渡ることを恐れています。イスラエルはそれが進展しているという本当の危険があれば、介入する可能性があると警告しています。
記事は一部を紹介しました。
11月の危機回避とは、12月に報じられた件のことだと思われます(記事はこちら)。
この記事が本当なら、現在、アサド政権は化学兵器を使いにくい状態にあると言えそうです。これだけ各国から警告されていること。化学兵器を動かした途端に、イスラエル空軍による空爆を受けそうなこと。米空軍も、その動きに同調しかねないこと。トルコ空軍がこれらに呼応する形で動く可能性も否定できないこと。追い詰められた状態で、敵をさらに増やすことになりかねないのです。
イスラエルが懸念するのは、どうせ滅ぶのなら宿敵に一矢報いてとアサド政権が考え、化学兵器を反政府派だけでなく、イスラエルにも向けることです。間接的にシリアの反政府派を支援することにはなりますが、自国が攻撃されることを心配しているわけです。もっとも、500ポンド爆弾は航空機で運搬する必要があるので、弾道ミサイルに搭載しない限りは、イスラエルにとって、それほど大きな脅威とはならないでしょう。それでも、500ポンド爆弾をシリアが使おうとすれば、イスラエル軍がそれを阻止しようとする可能性は十分にあります。
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