ダマスカス包囲地帯に民間人多数が残留か

2013.10.31


 BBCによれば、シリアのダマスカス郊外に、依然として孤立した民間人が大勢いる恐れがあります。

 民間人の脱出を目撃したBBCのライス・ドゥーセ記者(Lyse Doucet)は、シリア政府はムアダミヤ(Muadhamiya)には反政府戦士しかいないと信じています。しかし、報告は数千人の民間人が脱出することに恐怖を感じています。一方で、ムアダミヤの情報筋は、500人以上の男性がシリア政府に拘留されていると言いました。この主張は独自に確認されていません。

 これが真実なら、すべての男性がダマスカスの孤立した人々のための政府施設に到着したという、シリア赤新月社が水曜日の朝にBBCに述べた矛盾するコメントとなります。

 少なくとも3ヶ月、ダマスカス郊外は政府軍により包囲されてきました。残された人々は政府と反政府派戦士との間の避難交渉を通じて、脱出を認められました。シリア赤新月社活動の長、カリド・アーコソウジ(Khaled Arksoussi)は、1,500〜1,800人の人々が火曜日にムアダミヤを去ったと言いました。彼らは応急手当を受け、避難所へ連れて行かれました。1ヶ月程度家族がそこに留まると予測されます。一部は親戚などへ行くでしょうが、その他は行くべき場所がありません。

 シリア政府は民間人はすべて包囲された地域を去り、残っているのはテロリストだけだと言います。シリアのキンダ・アル・シャマット社会問題大臣(Kinda al-Shamamat)は、敵の背後にいる者はいないと言いました。「ムアダミヤの中には、武装グループがいます。彼らはテロリストです。いま、我々は民間人を安全な場所へ連れて行きます。そして、それらの人々は我々の責任ではありません。彼らはテロリストです」。

 しかし、BBC特派員は、ある活動家がスカイプ経由で、数千人の民間人が未だに内部に取り残されていて、逃げることを恐れていると言ったと言います。活動家は安全な通過を保証されたはずなのに、残された多くの男性は拘留されていると言いました。特派員は主張を確認できないと言いますが、包囲が終わっていないことは明らかです。

 ムアダミヤの糧食は涸渇し、住民は飢えから逃れるために懇願しています。シリア軍は以前に、ムアダミヤのような地域は降伏するか、飢えるかだと言いました。少なくとも2ヶ所の地域、ヤルモク(Yarmouk)と東ゴウタ(Eastern Ghouta)も政府軍に数ヶ月間包囲されています。今月初め、イスラム聖職者が猫、犬、ロバを食べるのを許可しました。

 ムアダミヤの人々に最悪の事態を恐れ、数ヶ月間、国連とその他の支援機関は緊急援助を要請しました。ある女性はBBCに「我々は9ヶ月間パンを見ていません」と言いました。「我々は葉と草を食べていました」。

 シリア政府の許可なく出国し、活動しているとして、シリアのカドリ・ジャミル副首相(Qadri Jamil)は火曜日に解任されました。和平交渉を討議するために、週末、ジャミル氏はジュネーブで米当局者に会いました。しかし、国営通信社Sanaは、ジャミル氏はアサド大統領により、事前の許可なく職場を去り、任務を遂行しなかったので解任されたと報じました。彼は政府との連携なく、国外で活動を行いました。


 記事は一部を紹介しました。

 多分、残留している民間人がいる方が真実に近いのだと考えられます。シリア赤新月社は代表的な国際支援団体ですが、国家組織でもあり、国によっては戦争推進に協力している場合があります。北朝鮮の赤十字社の活動が、他の国と大きく違うのと同じです。

 シリア政府としては、攻撃することに対する障害を排除したいので、テロリストしかいないと言うわけです。悪者ばかりだから、攻撃しても構わないという構図を作りたいのです。

 これら包囲地域の人々への支援が緊急に必要なことは説明を要しません。ジュネーブ条約でも、食べるものを手に入らないようにするとか、農業施設などを破壊する行為は禁じられていますが、内戦ではこうしたルールがしばしば破られます。この状況を無視している国際社会の動きは、本当に恥ずべき事です。

 ジャミル副首相が解任されたのは驚きでした。先月、彼の発言を紹介していました。その時はシリア政府の指示で発言しているのだと思いましたが、そうではなかった可能性もでてきました(過去の記事はこちら)。シリア政府は弱体化を見せようとしませんが、どこまで衰退しているのかが、ずっと気になっています。


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