米英がシリア北部への物資支援を中断

　BBCによれば、アメリカとイギリスは、人道支援を除いて、シリア北部の反政府派への非軍事的援助を中断しました。

　米報道官は、イスラム主義反政府派が西欧が支援する自由シリア軍の基地を占領したという報告に関して懸念があると言いました。反政府グループの新しい同盟であるイスラム戦線の戦闘員は先週、バブ・アル・ハワ国境検問（the Bab al-Hawa border crossing・kmzファイルはこちら）から自由シリア軍戦闘員を追放しました。

　非軍事的援助は、医薬品、車両、通信機材を含みます。それらがアルカイダ系テロ組織の手に渡ることを恐れ、アメリカとヨーロッパ諸国は、武器と弾薬を直接シリアの反政府派へ提供することを嫌ってきました。しかし、報じられるところでは、彼らは秘密の武器出荷を増加しています。

　ホワイトハウス報道官、ジョシュ・アーネスト（Josh Earnest）は、バブ・アル・ハワでの出来事の結果、アメリカが北部シリアへの非軍事支援の更なる配送をすべて停止したことを認めました。しかし、彼は人道支援はこの決定で影響を受けないと強調しました。

　イギリスのヒュー・ロバートソン外務大臣（Foreign Office Minister Hugh Robertson）は、現在知る限り、イギリスの機材はイスラム主義武装勢力の手に渡っていないと言い、「我々が正確に何が起きたかを知るまで、支援は停止するということです」と付け加えました。

　自由シリア軍は出荷停止は誤りだと言いました。「我々は友人たちが再考し、事態がより明白になる数日間を待つことを望みます」と広報官のロアイ・メクダッド（Louay Meqdad）は言いました。

　先月、７つの主要な反政府グループがシリア内戦で最大のグループ「イスラム戦線（the Islamic Front）」を結成し、その兵数は45,000人とされます（関連記事はこちら）。このグループは「イラクとレヴァントのイスラム国家」と「アル・ヌスラ戦線」のようなアルカイダ系グループを含みませんが、その憲章はムジャヘディンや外国人戦士を「聖戦で我々を支援する兄弟」として歓迎し、彼らと協力する意志を示唆します。先週、イスラム戦線は自由シリア軍最高軍事評議会の指揮を外れることを発表しました。

　４日後、その戦闘員たちはバブ・アル・ハワの基地と倉庫から最高軍事評議会参加の部隊を追い払いました。そこにはトルコからシリアへ運ばれる兵器と機材がありました。人権団体「The Syrian Observatory for Human Rights」は、多数の対空兵器と対戦車ロケットが奪われたと言いました。メクダッド氏は、イスラム戦線はその要員に立ち去るよう求めた後、最高軍事評議会の代わりに自身の旗を掲げたと言いました。しかし、彼は「我々はこれらの部隊は我々の兄弟で、彼らが我々が敵ではないことを知っていると信じます」と強調しました。

　水曜日、米大使館広報官は、バブ・アル・ハワの状況は最高軍事評議会に提供されたアメリカの機材と穂強雨品の状態を調べるために調査中だと言いました。アメリカの人道支援は国際的非政府組織によって配給されたので影響を受けなかったと広報官は言いました。ワシントン当局者は、ヨルダンを経由するシリア南部への非軍事支援は続けられると言いました。

　米政府は非軍事支援に２億5,000万ドルを国家連合、地域の反政府評議会と最高軍事評議会へ提供しました。反政府軍は食糧、医薬品、通信機器、車両を与えられました。イギリスは四輪駆動車、防弾ベスト、発電機、通信機材、浄水キット、対化学兵器防護機材など、2,000万ユーロ（約３千300万ドル）をを提供しました。

　火曜日、政府軍は、この地域の反政府派の最後の拠点、ヤブルード（Yabrud・kmzファイルはこちら）へ向けて進撃を始めました。

　記事は一部を紹介しました。

　国内で報じられている内容と、海外での報道は微妙に内容が違うようです。

　イスラム戦線がバブ・アル・ハワ検問を制圧する際には、戦闘が起きたとは記事に書いていません。そこにいる自由シリア軍に撤退するよう求め、彼らは戦いもせずに立ち去ったようです。

　確かに、イスラム戦線は検問所にあった物資が目当てで、結成後の補給路として、この検問所を手に入れたのでしょう。しかし、時湯シリア軍と完全に敵対するような雰囲気もありません。

　ここで自由シリア軍とイスラム戦線の間で交渉が始まり、その結果がまだ明らかではないという状況と考えられます。米英はそれを確認したがっているのでしょう。単純な分裂による内輪もめではないかも知れません。

　一方で、物資の中に対空兵器と対戦車ロケットが多数あったという点が気になります。非軍事的支援限定のはずなのに、武器があったことになります。これらが米英などから提供されたのか、湾岸諸国からなのかが分かりません。今年３月に自由シリア軍のイドリス准将が対戦車と対空ミサイルを熱望するコメントを出していましたが、それに応えたものなのかどうかは分かりません（過去の記事はこちら）。また、ほとんど何も受け取っていないという主張も、自由シリア軍将校から出ています（過去の記事はこちら）。各方面の主張が食い違い、外国による支援がどうなっているのかは闇の中です。さらに事態を注視していく必要があります。

　ヤブルードは、先日、シリア軍が占領したナブクの南にある町です。古い城塞の周辺に発展した街で、旧道上にあるようです。東側の幹線道路を政府軍が押さえているかどうかが気になります。