シリア化学兵器攻撃の国連報告書
military.comによれば、国連査察官がシリアの化学兵器に関する報告書を公表しました。
国連査察官は、8月にシリア政府が化学兵器を放棄させたダマスカスでの攻撃に加えて、4ヶ所で化学兵器が使われたとしました。
木曜日に公表された報告書で、エイク・セルストーム教授(Ake Sellstrom)が率いる専門家たちは、化学兵器攻撃が行われたと疑われた7ヶ所を調査し、2ヶ所では申し立てを補強するための情報は不足していたと言いました。査察官の限られた権限は、政府と反政府派のどちらが攻撃を行ったかを特定するのを妨げました。
化学兵器が使われたと判断されたのは以下の4ヶ所で、うち2ヶ所ではサリンが検出されました。
アレッポ郊外カーン・アル・アサル(Khan al Assal・kmzファイルはこちら)
ダマスカス東部郊外ジョバル(Jobar・kmzファイルはこちら)
北西部イドリブ近郊サラケブ(Saraqueb・kmzファイルはこちら)
ダマスカス田園地帯アシャラフィア・サナヤ(Ashrafiah Sahnaya)
9月16日に関する初期報告書で、セルストームのチームは、8月21日の攻撃に続いてダマスカスのゴウタ地区(Ghouta)で集めた証拠は、サリンを搭載した地対地ロケットである明白な証拠だったと結論しました。
専門家たちは、2013年3月19日にカーン・アル・アサル(Khan al Assal)で化学兵器が使われたという信頼できる証拠を集めたと言いました。報告書は医療、軍、保険関係者からの情報は、有機燐化合物の集団中毒が起きたことを強化しました。しかし査察官は、現場での化学兵器の放出は、サンプルが科学的に収集され、保存され、分析されなかったため、化学剤の放出の方法に関する主要情報が足りず、独自には確認できなかったと言いました。
国連派遣団は、2013年8月24日にジョバルで化学兵器が、兵士に対して比較的小規模で使われた可能性があることに一致する証拠を集めました。しかし、送達システムとサンプルの保管に関する情報がないため、犠牲者、出来事、現場の関連を確立できなかったと言いました。
報告書はジョバルは過去の地雷除去活動と事件に使われた弾薬と疑われる爆発物2個の残骸を移動したとされるシリア政府の代表者の訪問により損傷を受けました。
査察官は生存者と子供へのインタビューと医療記録は有機リン系中毒の症状であることを確認しました。彼らは8月24日にシリア政府が採取し、国連がDNA技術で本物と確認した血液サンプルはサリンの陽性反応を示し、9月28日に同じ患者から採取された血液サンプルはサリンの陽性反応を示したと言いました。
サラケブでは、彼らは2013年4月29日に、より小規模で、民間人に対しても化学兵器が使われたことを示す証拠を集めたと言いました。送達システム、サンプルの保存に関する情報不足により、事件と現場、死亡した女性との関連は分かりませんでした。査察官は、査察官が居る前で行われた検死の間に採取された彼女の臓器のサンプル数種はサリンの陽性反応を示したと言いました。
2013年8月25日にアシャラフィア・サナヤで、兵士に対して、小規模に化学兵器が使われた証拠を集めたと言いました。しかし、送達システムの情報はなく、事件の1週間後と1ヶ月後に行ったテストは陰性を示しました。
報告書は、査察チームはたいていは治安状況が悪いために、ほとんどすべての現場に行くことができなかったといいました。最終報告書の7ヶ所の現場中、ゴウタとジョバルは訪問しました。
記事は一部を紹介しました。
アシャラフィア・サナヤの場所はまだ未確認です。
すでに国内でも報じられていますが、当サイトで繰り返し警告しているように、国内報道では情報が省略されたり、時にはそれが恣意的に行われるため、海外の情報を直接読んだり、報告書自体を参照するように努めなければなりません。
しかし、記事を見る限りでは、報告書にはこれまで報じられていたものから大きく違った内容はありません。かつて当サイトでも紹介したように、化学兵器の残骸らしい物体も攻撃に使われたと断定されたようです。(関連記事はこちら 1・2)
今後、化学兵器が使用された場合に備えて、緊急に証拠を採取するシステムを確立しておく必要性を感じます。現地スタッフに渡せる試料採取キットのようなものが必要です。それは化学兵器の使用に対して若干の抑止力になります。しかし、最も重要な抑止力は、国際社会の一貫した態度と武力なのです。報復が予想される場所では大量破壊兵器は使用されません。今年、シリアでは化学兵器が使用されたのに、国際社会は大規模な報復を行いませんでした。これが悪しき前例となった可能性があります。いずれにしても、近い将来に国際社会が介入しないことには、シリア内戦は完結しないでしょう。
|