中国が防空識別圏への批判に反論

2013.12.4


 読売新聞によれば、中国外務省の洪磊(ホンレイ)副報道局長は3日の定例記者会見で、東シナ海に設定した防空識別圏について、「設定は国際法や国際慣例にかなっている」と述べ、撤回などには応じられないとの考えを示しました。

 中国国防省の耿雁生報道官は3日、今回設定した防空識別圏に関し、「意義は防衛であり、いかなる国家、地域の脅威にもならない」彼らこそ1969年に(東シナ海に)防空識別圏を設定し、何度も拡大してきた。あれこれ言う資格はない」との談話を発表しました。


 耿報道官の談話を読売新聞が正しく報じているかは、先日の記事(過去の記事はこちら)を見るように、まったく信用できません。まずは中国が何を考えているのかを正確に理解する必要があります。実際には、報道官は前回紹介した記者会見とほぼ同じ内容を繰り返したのです。(国防部の発表はこちら

 いくつかポイントを紹介します。

  • 防空識別圏と領空は本質的に別のものであり、領空外の国際空域に設けた識別・警報の範囲である。
  • 防空識別圏を設けることは、国家の防空を保障することに十分な警報時間を提供する。
  • 中国の防空識別圏の監視・管理能力に疑問が出ているが、中国は完全に防空識別圏を監視・監督できる。通常は飛行計画やレーダーなどを利用し、脅威がない場合は戦闘機が離陸する必要はない。
  • 防空識別圏は安全地帯であり、リスク圏ではない。協力圏であり、対立圏ではない。

 簡単に言えば、中国は防空識別圏内の民間機の通行は安全を保障する。軍用機については、脅威の低度に応じてスクランブル発進を行う、ということです。これが繰り返し確認されたのだから、この方針は中国政府の公式見解と判断してよいでしょう。

 日本政府の反応は、こうした事実を無視しています。相手と議論する気がないから、あえて無視ししているわけです。それは作戦上のものとはいえますが、よい結果を生むかは疑問です。ロシアとも似たような作戦を用いていますが、結果は出ていません。日本の外交は硬直化しているので、これは今後も変わらないでしょう。


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