アサド支持の聖職者が爆発で死亡

2013.3.22
修正 同日 14:30

 BBCによると、シリア政府を支持するスンニ派の聖職者がダマスカスの中心部にあるモスクで爆発により死亡しました。

 国営通信社「Sana」はモハメッド・アル・ブーティ(Mohammed al-Buti)がイマム・モスク(Iman mosque・kmzファイルはこちら)でテロリストの爆発により殉死したと言いました。少なくとも14人が爆発で死亡し、40人以上が負傷しました。この聖職者は80歳代で、アサド大統領の長年の支持者で、よくテレビに出演しました。マズラ地区(the Mazraa district)での爆発はテロリストの自爆攻撃だったと言いました。現場の死者と負傷者の映像が報じられました。

 人権団体「The Syria Observatory for Human Rights」は、少なくとも15人の民間人が死亡し、大勢が負傷したと言いました。地元調整委員会は死者の数を20人としました。事件当時、現場は完全に政府軍の支配下にあったとされます。

 ロイター通信は、爆発は近くに落ちた迫撃砲弾が起こしたのかも知れないという地元住民の意見を報じました。

 ブーティ師は、アラウィー派のアサド大統領に対する反乱を主導したシリアで少数派のスンニ派でしたが、アサド大統領の支持者でした。彼は定期的にテレビで説教をして、反政府派を激しく批判しました。ブーティ師はスンニ派のコミュニティで憎悪の対象となり、彼の死はアサド政権にとって大きな打撃となりました。

 アレッポでの化学兵器の攻撃に関して、国連の潘基文事務総長(Secretary General Ban Ki-moon)は、化学兵器禁止機関(OPCW)と世界保健機構(WHO)で調査を行うように活動していると、木曜日に言いました。「私の発表は、化学兵器の使用は人道に対する罪だということの明確な注意として用いられなければなりません」「国足社会は化学兵器の貯蔵が検証可能な形で保護されているという完全な保証を必要としています」と言いました。


 イマム・モスクは、先日、アサド大統領の妻が姿を現したオペラハウスから北東に2km程度の場所にあります。ここから100m足らずの場所で、先月21日の朝、ロシア大使館とバース党本部を狙ったとみられる自動車爆弾が爆発する事件がありました(過去の記事はこちら)。この時の犠牲者は、53人が死亡、200人が負傷という大規模なものでした。それに比べると、今回の犠牲者は人数が少なく、迫撃砲弾だという見方も可能だという気がします。先日、使用が確認された120mm重迫撃砲だとしても、おかしくはありません。

 シリア政府が自動車爆弾だというのは、2月に自動車爆弾の攻撃があった場所に近いからかも知れませんが、現場の状況が分からないので、なんとも言えません。自爆攻撃なら、すぐに犯行声明が出されるはずです。

 ブーティ師を直接狙った攻撃なのか、たまたまブーティ師が巻き込まれたのかにより、攻撃の意味は違ってきます。

 ところで、米下院情報特別委員会のマイク・ロジャース委員長(Mike Rogers・共和党)が、アサド政権が化学兵器を使用した可能性が高いとして、オバマ大統領に行動を促しているという報道もあります。一体、どんな確証があって、こう言っているのかと思いました。まだ、化学兵器の使用は確認されていません。すぐに戦争に走ろうとする者たちの発言には警戒しなければなりません。オバマ政権はこういう国内の挑発に乗って、地雷を踏まないようにしなければなりません。

 追加と訂正をします。

 上の記事は、ブーティ師が死亡した現場の映像を見る前に書いたものでした。映像を見ると、現場はモスクの内部のようです。aljazeera.comの記事を見ても、爆発はモスクの内部で起こっており、ブーティ師を狙った自爆攻撃と考えた方がよさそうです。シリア政府と反政府派は互いに責任を押しつけ合っていますが、状況から見ると、自由シリア軍と共に行動していない、イスラム過激派の犯行と考えた方がよさそうです。


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