平和維持軍隊員の解放交渉が進行中
military.comによれば、シリアで拘束された国連平和維持軍(UNDOF)の隊員が、インターネット上に投稿されたビデオ映像で無事を報告しました。
ビデオ映像は迷彩服と、「国連」と「フィリピン」と記された青い防弾ベストを着用した3人の男を映しました。「ここにいる我々、国連要員は無事で、自由シリア軍は我々を適切に扱っています」と1人の男が英語で言います。「我々はアサド(大統領)が爆撃を止めないために家に帰れません。我々の家族へ言います。我々はみんなに早く会いたい、我々はここで無事でいます」。
2本目のビデオは6人の平和維持軍隊員が部屋の中に座っているのを示します。大尉と分かる将校は彼らの車列が水曜日に砲撃に見舞われたと言います。「我々は止められ、民間人が我々が安全になるのを助け、保護するために別々の場所に振り分けました」。
ヤルモク殉教者旅団の公報は、スカイプを通じて、21人の平和維持軍は元気で、健康でいると言いました。「我々は彼らをゲストと思っています」。
自身の安全のために匿名を希望した反政府派の公報は、平和維持軍の任務は、戦車のような重火器をイスラエルとシリアの休戦ラインの近くに置かないことを確保することだと言いました。数ヶ月間、シリア軍は戦車を反政府派と戦うためにこの地域に運び、休戦ラインの近くに入り、先週末には武装ヘリコプターが戦いに加わりました。平和維持軍兵士を国際組織に引き渡せるかについて、彼は「指揮官がそれを決定するだろう」と言いました。「我々は平和維持軍隊員がこの地域を去れば、政府軍は千人を殺すだろう」と付け加えました。彼はジャムラ村とその周辺の村への砲撃で、少なくとも10人が死亡し、多くが負傷したと言いました。
木曜日、シリア軍はダルア州(province of Daraa)南部のゴラン高原の近くで反政府軍と戦ったと、人権団体「the Syrian Observatory for Human Rights」のラミ・アブドル・ラーマン(Rami Abdul-Rahman)は言いました。彼は戦闘が、イスラエルが支配する領域から約1kmのジャムラ村の周辺に集中したと言いました。
水曜日にインターネットに投稿されたビデオ映像で、ヤルモク殉教者旅団の公報とみられる男が、シリア軍がジャムラから撤退するまで平和維持軍隊員を拘束すると言いました。ヤルモク旅団は木曜日にフェイスブックでの声明で、政府軍が村を砲撃し、反政府派が拘束している平和維持軍兵士にいかなる危害でもあれば、政府軍の責任だと言いました。
マニラでは、フィリピン政府が木曜日に、平和維持軍は傷つけられておらず、良好に扱われていると言いました。外務省公報のラウル・ヘルナンデス(Raul Hernandez)は、現地の国連軍指揮官が反政府グループ指導者と交渉していると言いました。ベニグノ・アキノ大統領(President Benigno Aquino III)は、指揮官は彼に平和維持軍隊員は24時間以内に解放されるだろう、交渉はうまく進展していると言ったと言いました。
人権団体は隊員を引き渡すための反政府派とアラブ連盟、国連との間の交渉が進行中で、議論は現在、国連軍を運ぶのにどの道を使うべきかに集中していると言いました。反政府派は政府軍がこの地域から車両を引き揚げ、この地域への砲撃を永久的に終わらせ、難民の帰還を許すことを希望しています。事件が平和的に解決しても、UNDOFがシリア国内で活動を続けるかは現在明らかではありません。
元国連当局者で、現在、ニュースサイト「Al-Monitor」で働くゴクセル(Goksel)は、平和維持軍のメンバーを「ソフトターゲット(攻撃されやすい目標)」だと言いました。彼は平和維持軍はダマスカスに拠点を置きますが、休戦ラインに沿った監視所に隊員を置き、補給品を配送し、監視員を交代させるためにシリアの首都と国境地域を行き来すると言いました。「これまでは彼らはシリア国内で挑発されませんでした」とゴクセルは言いました。
ヤルモク旅団は1年前に結成され、その戦闘員は南部貧困層の若いシリア人であるとみられると、人権団体のアブドル・ラーマン(Abdul-Rahman)は言いました。
シリア国家評議会は木曜日に声明の中で、代表者がジャムラ地区の反政府派と平和維持軍隊員を解放するように接触していると言いました。声明は平和維持軍部隊が誘拐されたことを否定し、事前に安全を確保するための方法で拘束されたと言いました。
12月に統一した指揮系統を設立する試みが行われましたが、反政府グループは独立して活動する傾向があり、ゴラン高原付近の地元反政府派が亡命した指導者からの要請を聞き入れるかは分かりません。反政府戦士は亡命した反政府派の人物を音信不通とみる傾向があります。
military.comによれば、イスラエルは平和維持軍隊員が拘束されたことで、ゴラン高原から平和維持軍が撤退してしまうことを懸念しています。
「この誘拐はこの部隊に参加する国に兵士を帰国させることを確信させそうです。それは疑いなくゴラン高原の非武装地帯に危険な真空地域を作り出します」と匿名のイスラエル当局者は言いました。「創設以来、平和維持軍は平和を維持するという任務を成し遂げてきました」。
売上高トップの日刊紙「The Yediot Aharonot」は、イスラエル当局は、この地域の国連部隊が取り除かれ、アルカイダのメンバーがイスラエルとシリアの緩衝地帯の支配を得ることを懸念していると言いました。
2月まで、UNDOFにはオーストリア、クロアチア、インド、フィリピンの兵士約1,000人が参加していました。先週、クロアチアが100人を安全のために撤退させると言い、数ヶ月前の日本の撤退に続きました。カナダは2006年3月に兵士を撤退させました。
記事の一部は省略しました。
誘拐の経緯は分かりません。安全のために平和維持軍の隊員を避難させたという主張について、あれこれ考えても、確認できない以上、意味はないでしょう。
重要なのは、フィリピン兵が安全だということです。交渉も進展しているようですから、多分、近い将来、釈放されると考えます。シリア政府が要求をのむ可能性はなく、拘束者が反政府派の穏健グループとつながりがあるからです。
シリア内紛の深刻さに比べると、この事件はごく小さな出来事です。
私は日本がゴラン高原から撤退したことは正しい判断だと思います。昨年11月末に、オーストラリア兵が移動中に内戦に巻き込まれて負傷する事件が起きており(関連記事はこちら)、翌12月に日本は撤退を決定しました。安全の確保が難しいというのは、ゴラン高原の情勢ではなく、シリア国内の情勢不安定なのです。この紛争がこの先どうなるか分からないことを考えると、安全のために撤退するというのは1つの選択肢です。もちろん、国連部隊が完全にいなくなる危険はあります。アルカイダがそこに入り込む危険も考えられないわけではありませんが、そうなればシリア軍が対処することになるでしょう。平和維持軍がイスラエル側から入る形にすれば問題は緩和されるかも知れませんが、シリア政府との話し合いが必要になるでしょう。
場合によっては、卑怯者と言われても、逃げることが重要な場合もあります。自衛隊の撤退で、関係国との信頼関係が崩れると主張した人がいますが、安全補確保が最優先なのです。それに停戦任務と停戦の実現よりも関係国との信頼関係を先に主張する意味が分かりません。多分、シリア政府が十分に安全を確保してくれないので、自衛隊は撤退を考えたのだと思います。その辺の事情は詳しく公表されていません。ゴラン高原での安全はともかく、ダマスカスへの移動中の安全が確保されないのなら、撤退はやむを得ない判断です。
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