北朝鮮が国民向けの勝利宣言か

2013.4.16


 FNNによれば、北朝鮮の労働新聞は14日、「前代未聞の対決戦で、われわれが主導権を握り、敵はどぎまぎしている。われわれには、災いを福に作っていく勝利者の春である」と、一連の挑発行為の成果を誇示するような内容の社説を掲載しました。

 この意味について、コリア国際研究所の朴斗鎮所長は「(北朝鮮国内向けの)勝利宣言といえるでしょう、それは。アメリカと韓国の合同軍事演習『ホールイーグル』が、まだ続いている。この間に、また何かが起こればね、その期間に(ミサイルを)撃ってくる可能性も高いでしょう」と述べました。

 毎日新聞は、北朝鮮の対決姿勢が長期化する可能性を、次のように指摘しています。

 朝鮮中央通信によると、平壌中心部の「万寿台(マンスデ)の丘」に建つ金国家主席と故金正日(キム・ジョンイル)総書記の銅像の前に多くの市民が献花。韓国政府内には、軍事パレードが行われるとの見方もあったが、15日夜現在、北朝鮮メディアは報じていません。日米韓などは中距離弾道ミサイル「ムスダン」などの発射があると見て警戒態勢を取っていますが、韓国メディアによるとミサイル発射に向けた動きは止まったままです。韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外相は15日、ソウルでの講演で北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)第1書記体制について「以前よりも予測できる可能性が非常に低い」と述べ、今後の出方を読むのは難しいとの考えを示した。国防省報道官は15日、「10日以降、ミサイル発射がありうると見てきたが、(現在の緊張状態が)長引くかもしれない」と話しました。北朝鮮情勢に詳しい尹徳敏(ユン・ドクミン)韓国国立外交院教授は「4月末で米韓合同軍事演習が終われば、米国との対話や日米韓に支援を求めるなど新たな局面に入るかもしれない」と述べ、北朝鮮が出口戦略を模索している可能性を指摘しました。


 記事は一部だけを紹介しました。

 労働新聞の記事は、この不可解な危機が終結に向かっていることを示すと、私は考えます。

 韓国政府が「対話」を提案し、アメリカがそれを後押ししたこと。開城工業団地の韓国企業が、操業再開を促すために訪朝を企画していること。これらは「敵が我が軍の威力に怖じ気づき、謝罪の意向を示したもの」という、北朝鮮なりの名分だという認識がなされたものと考えられます。まもなく、米韓合同演習が終わりますから、それに合わせて、対決姿勢を解消し、開城工業団地を再開させるというシナリオが現実的です。

  この形で終わるのなら、この見せかけの危機は、別の現実を示すことになります。やはり、ムスダンなどの中・長距離弾道ミサイルは完成しておらず、打ち上げることができないということです。北朝鮮がいくら誇張しても、彼らがやれたのは軍事的威圧ではなく、経済的な威圧です。開城工業団地に入っている中小企業が困らないように、早期に事態を収拾しようとしただけで、弾道ミサイルも、通常戦力も脅しの材料にはなりませんでした。弾道ミサイルは移動式発射台を動かして見せただけのショーに過ぎず、対上陸演習の合成写真から、小規模の演習だったことが暴かれました。軍事パレードは行われず、北朝鮮の内政の厳しさを連想させただけでした。

 米韓が来年やるべきなのは、北朝鮮のこうしたショーに、冷淡な反応しか示さないことです。年々、北朝鮮が行える軍事活動は小規模になっています。そろそろが、頃合いかも知れません。

 今回も、開城工業団地を再開する時に、閉鎖中の賃金も支払えと北朝鮮は言ってくるはずです。それに応じないことが、来年の下地を醸成します。北朝鮮が賃金を払わないなら工団の閉鎖を続けるというのなら、韓国は我慢比べをしてみるべき時かも知れません。

 今日、北朝鮮問題について質問がありましたので、回答を掲載しました。(回答はこちら


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