オスプレイ事故で死亡した隊員の父親が提訴
military.com によれば、昨年ハワイで起きたオスプレイの墜落事故で海兵隊員の父親が航空機メーカーを設計上の欠陥が事故の原因だとして訴えを起こしました。長い記事ですが、ごく簡単に紹介します。
訴訟を起こしたのは死亡したペンデルトン基地の第1海兵連隊第3大隊L中隊の歩兵分隊長マシュー・データーマン(Matthew Determan)の父親マイク・データーマン(Mike Determan)です。
(事故の詳細と原因に関しては過去の記事をご覧下さい こちら )
マイク・データマンは第三世代のティルトローター、ベル社のV-280「ヴェイラー」が配備する準備が整うまでオスプレイを飛行禁止にするという海兵隊の解決を待ちます。この航空機は2017年まで最初の飛行テスト用に試作品の準備ができないとみられ、V-280に関する海兵隊の配備、購入計画は明らかではありません。海兵隊報道官のサラ・バーンズ大尉(Capt. Sarah Burns)は、海兵隊にはMV-22を飛行禁止にする計画はなく、それは危機対応と長距離の空輸の戦略の目玉となっていると言いました。バーンズ大尉が提供した数字によると、オスプレイのA級の事故率(人命の損失や2百万ドル以上の損害)は相当する航空機の概ね一致しているか、よりよいものです。
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ごく簡単に書きましたが、ハワイでの事故はオスプレイが着陸しようとした時に、地上から砂塵を大量に吹き上げさせ、それを吸い込んだエンジンが故障して機体が急落したというものです。
マイク・データーマンはV-280なら、そういう問題が起きないのではないかと考え、これが配備されるまでオスプレイを飛行禁止にしろと主張しています。
この機はまだ開発中で詳細は分かりません。Wikipediaの記事 によると以下のような内容です。
V-280は巡航速度280knot(時速515km)、最高速度時速520km、行動範囲3,900km、実質戦闘範囲930〜1,480kmに設計されていると報告されます。予測される最大離陸重量は約13,608kgです。V-22との大きな違いの一つはローターとドライブシャフトが傾いてもエンジンがそのままの位置にあることです。ドライブシャフトは真っ直ぐな翼の中を通り、両方のプロップローターがエンジン損失の場合に一つのエンジンで動くことを可能にします。V-280は格納式車輪、三重冗長フライ・バイ・ワイヤー制御システムとV型テイルを持ちます。翼は炭素繊維で補強したポリマー化合物の単一のセクションでできており、重量と製造コストを低減します。V-280は乗員4人がおり、兵士14人を輸送できます。二連のカーゴフックは時速280kmで飛びながら、4,500 kgのM777A2榴弾砲1門を運ぶ能力があります。胴体はUH-60「ブラックホークに酷似しています。着陸時、翼は地上から2.1m上にあり、兵士が2つの幅1.8mのスライドドアから容易に出られ、ドア機銃手は広範な射界を得られます。
能力はV-22「オスプレイ」と似たような内容ですが、ローターをヘリモードにしてもエンジンが縦を向かないことと、エンジン1基が故障しても墜落しないことは、オスプレイに比較すると大きな違いで、V-280の方がずっとよさそうです。
ハワイの事故でもオスプレイが巻き上げた砂塵が事故原因で、類似する事故が何度も起きていますが、V-280のエンジンは常に水平を向いたままなので、エンジンの排気ガスがより多くの砂塵を巻き上げ、それがエンジンに吸い込まれる危険はより小さいと言えます。
ドライブシャフトが2つのローターを繋いでおり、エンジンの動力を伝えられるので、片方のエンジンが止まっても、もう1つのエンジンで何とか浮いていることができる点は、ハワイの事故のように地表近くでの急落が起こらないことを意味します。
データマンの主張は重要で、合理的です。しかし、訴えは却下されるでしょう。
日本もV-280の開発状況を見守り、兵器の仕様を確認した上で購入を決めればよかったのでしょう。しかし、事態はすでに手遅れです。オスプレイは導入され、それを操縦する隊員が選抜されます。それを黙って見ているしかないのは何とも嫌な気分です。