モスルとラッカで同盟軍が白燐弾を使用

2017.6.15


 muricatoday.comによれば、今月はじめに、イラクのモスル(Mosul)とシリアのラッカ(Raqqa)で、アメリカが率いる同盟軍について、焼夷化学兵器の白燐弾を民間人に対して使っているという複数の報告が浮上しました。

 一週間の間、米政府と同盟軍は現在まで、この問題ではほとんど沈黙を守っていました。

 ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)とのインタビューの中で、ニュージーランド軍のヒュー・マクアスラン准将(Brig. Gen. Hugh McAslan)と同盟軍のメンバーは、はじめて、白燐弾をイラクのモスルでの作戦の間に白燐弾を使ったことを認めました。

 「我々は民間人を安全に外へ出すために、白燐弾をモスル西部の中の地域を遮蔽するために利用していました」とマクアスラン准将は火曜日にNPRに言いました。

 民間人に対して化学兵器を使う恐るべき性質を疑うかわりに、NPRは准将の所感を繰り返し、民間人28,000人がなんとか逃げたことを指摘しました。

 それが事実であったとしても、無数の人々がは負傷したか、ゾッとする死を迎えました。

 白燐弾は、様々な軍事目的のために使えるいくつかの異なる弾薬に充填される、焼夷性がある有毒な化学物質といわれます。

 化学兵器は武力紛争の間に戦争の手段または方法として焼夷兵器を用いることを制限する1980年の焼夷兵器議定書のあと禁止されました。

 化学兵器の使用は国際的な武力紛争において明確に禁止されます。

 国際赤十字委員会は、窒息、有毒またはその他のガス、類似する液体、材料、装置すべてを用いることは戦争犯罪として国際刑事裁判所の法律の中に列挙されると指摘します。

 一方で、住宅地への焼夷兵器の展開は通常兵器条約(CCW)の第三議定書で禁止されている一方で、他2つの用法、煙幕と信号は禁止されておらず、偽善的なアメリカがそうした弾薬を武器庫に置き、使用することを許しています。

 アメリカがこれらの致命的な兵器を街へ展開する権利を主張することは、この抜け穴をすり抜けます。

 2005年11月30日、ピーター・ペース将軍(General Peter Pace)は、白燐弾は目標を照らし、煙幕を作るために使う軍の合法的なツールで、「それは化学兵器ではない。焼夷兵器だ」と言いました。しかし、将軍は間違っています。

 白燐弾が人々に対して展開されるなら、直ちにそれは化学兵器となります。

 化学兵器には、その化学作用を通じて、生命プロセスに対して、死亡、一時的な能力喪失、永続的な損傷を生じ得るあらゆる化学物質がなりえます。

 白燐は故意に火災を起こしたり、人を攻撃するために使われると非常に危険です。

 子弾は展開の後日に着火しえて、街にとっては危険なままです。

 化学物質による負傷は骨まで燃えることがあり、燐の破片が傷の中に残るなら、包帯を変えるときに空気に触れると再着火する傾向があります。

 「白燐弾がどのように使われたかどうかは問題ではありません。それはラッカとモスルのような人口の多い都市と、民間人が集中するその他のあらゆる地域で、恐ろしく、長く続く損傷の高いリスクをもたらします」と人権団体「Human Rights Watch」の武器ディレクター、スティーブ・グース(Steve Goose)は言いました。

 シリアとイラクの現場からの損害報告を評価すると、煙幕や信号として白燐弾を用いたというアメリカの主張は虚ろに聞こえます。

 人権団体が警告したとおり、民間人の犠牲は、事実、同盟軍の白燐弾の展開による現実でした。

 新華社新聞は先週、「木曜日、アメリカが率いる空爆が白燐弾でラッカを狙ったとき、民間人10人が殺されました」といい、シリアのFMラジオ曲シャム(Sham)の報告を引用しました。

 ロシアの「Riafan.ru」は「アメリカが率いる同盟軍がラッカと近郊を白燐弾で砲撃する」と、同盟軍が20回の空爆を行ったというツィッターでの報告を引用しました。

 民間人の死者の総数は確認されていないものの、初期報告は約50人が殺されたことを示唆します。

 「白燐弾の過去の使用による恐ろしい民間人の損傷は大衆を激怒させており、白燐弾の最新の使用は国際法を強化する緊急の必要を強調します」とグース氏は言いました。

 NPRは将軍に米軍が白燐弾を使ったことを認めさせたものの、その他のアメリカの主流メディアはこの爆撃の話を取り上げませんでした。

 彼らの沈黙は西側諸国の戦争犯罪の嫌疑を隠蔽する、彼らの共謀した性質を示します。

 「アメリがが主導する部隊はイラクとシリアで白燐弾を使うとき、民間人の損傷を最小化するためにあらゆる可能な予防措置をとるべきです」とグースは状況について言いました。

 しかし、現場からの報告からは、そうではないように見えます。

 alarabiya.netによれば、国連の戦争犯罪捜査官は水曜日、アメリカが支援する部隊によるイスラム国のシリアでの拠点、ラッカ(Raqqa)に対する攻撃を支援する激化する同盟軍の空爆が驚くほどの民間人の人命損失を引き起こしていると言いました。

 アメリカが率いる同盟軍が支援するクルド人とアラブ人民兵のグループ、シリア民主軍は一週間前にラッカ奪還を目標値して、街への攻撃をはじめました。

 同盟軍の重爆撃に支援されるシリア民主軍は、街の西部、東部、北部で領域を獲得しました。

 国連査問委員会の委員長、パウロ・ピンヘイロ(Paulo Pinheiro)も人権評議会へ、アレッポ東部(Aleppo)を含めた包囲地域から戦闘員と民間人を避難させるためのシリア政府と武装グループの間の十項目の合意は、民間人に選択肢がないとして、一部の場合で戦争犯罪になっていると言いました。


 リンク先の記事には証拠であるビデオ映像がありますので、ぜひ御覧ください。

 映像を撮影したクルド人フリージャーナリストのファゼル・ハウラミ(Fazel Hawramy)によれば、場所はザンジリ(Zanjili) です。この頃、ザンジリにあるペプシ工場の近くの道路が民間人の脱出路として使われていたという記事があります(関連記事はこちら)。この道路がイスラム国に見つかって、民間人が攻撃を受けました。

図は右クリックで拡大できます。

 ハウラミの映像を見ると、撮影場所が特定できます。左側のタンクと右の赤い屋根が手がかりになります。

図は右クリックで拡大できます。

 ザンジリ地区にはタンクが2つありますが、支柱の形状から小さい方のタンクが写り込んでいることがわかります(写真中の①)。赤い屋根の建物②も確認されます。ハウラミはその手前の建物、教育病院③から撮影したようです。爆撃されているのはその先にある教育病院④とさらに奥にある建物(写真外)のようです。

図は右クリックで拡大できます。

 明確ではないものの①がペプシ工場ではないかと推定されます。②がタンク。③が教育病院。④はモスルホテルです。病院とホテルが白燐弾で攻撃されているように見えます。病院の上にイスラム国の旗が翻るのが映像に見えます。

図は右クリックで拡大できます。

 ここから考えられるのは、イスラム国は橋につながる幹線道路を監視するために、病院③とホテル④に兵士を配置してて、民間人を狙撃していたということです。

 同盟軍は狙撃兵の視界を塞ぐために白燐弾を病院とホテルに落としたと考えることもできます。建物から道路までは距離があるので、民間人への被害は少ないと考えたのかもしれません。 

 ここまでの検証では、無差別な白燐弾攻撃ではない可能性があるといえます。通常の砲弾では破片が飛び散り、やはり被害が予想されます。だから、白燐弾を用いたと考えることは可能です。

 問題は民間人に被害が出たかどうかですが、記事には明確な数字はなく、現地での調査も困難でしょう。

 米軍は煙幕用の白煙弾を攻撃に使うことがあります。この場合、煙幕用に造られたものでも、兵器として考える必要があるので、今回の使用の評価は微妙です。

 しかし、推定が当たっているかを確認しなければなりませんし、シリアでは国連戦争犯罪捜査官が苦言を呈しているのですから、評価は慎重にしなければなりません。

 

 


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