南シナ海で中国艦が米艦に急接近
military.comによれば、南シナ海のスプラトリー諸島で、中国軍の駆逐艦が米艦船に「危険でプロ的でない機動」で45ヤード以内(41m)に接近したと、米海軍は言いました。
アーレイ・バーク級駆逐艦、USSディケイター(USS Decatur )は午前8時30分頃、中国軍の旅洋型駆逐艦(Luyang)が接近したとき、ガベン礁(Gaven Reef)の近くで定期的な航行の自由のパトロールを行っていました。
「中国軍駆逐艦は海域を離れるようとの警告を伴う、ますます攻撃的な一連の機動を行いました」と米太平洋艦隊の報道官、ティム・ゴードン中佐(Lt. Cmdr. Tim Gordon)は声明で言いました。
「ディケイターが衝突を防ぐための機動を行ったあと、中国軍駆逐艦はディケイターの艦首の45ヤード以内に接近しました」。
海洋の境界を含めた国際紛争を解決する政府間組織である常設仲裁裁判所の2016年の裁定で、ガベン礁は中国が主張していた重要な陸地の特徴を持たず、そのために排他的経済水域を欠いているとされました。
にも関わらず、2014年と2015年に中国は環礁内でいくつかの土地の特徴を拡張し、それから環礁を対空砲と艦砲とレーダーで武装しました。
中国は、ときには無線の警告ですが、別のときには嫌がらせの機動によって、南シナ海の領域を通過するアメリカの艦船と航空機にしばしば対抗します。
「米海軍艦と航空機は定期的に南シナ海を含めてインド洋・太平洋全体で活動します」とゴードン中佐は言いました。
「我々が数十年やっているように、我軍は国際法が許すどんな場所でも飛び、航行し、活動するでしょう」。
記事の後半は省略しました。
「ディケイターが衝突を防ぐための機動を行ったあと、中国軍駆逐艦はディケイターの艦首の45ヤード以内に接近しました」との記述から、明らかに中国艦がディケイターの進路を変えさせようとしたことが分かります。それによって、米艦に警告を与えているのです。
実際、どんな感じだったかを簡単な図で示しました。艦の大きさと艦の間隔はほぼ正確に描きました。中国艦が米艦の目の前を通過したことが分かります。
もっとも、この程度のことで衝突する可能性は低いといえます。米艦同士がしばしば友軍艦に挑戦を申し込み、洋上レースを行うことがあります。かつて、駆逐艦カウペンスがジョン・S・マケインとレースをして、カウペンス艦長が危険な操船をして、ジョン・S・マケインに接近しすぎたとして処分を受けたことがあります。(過去の記事はこちら)
場所は南シナ海の南方です。ガベン礁は中国のほか、台湾とベトナムが領有を主張しています。2016年の裁定では、ガベン礁の北側は排他的経済水域と岩であり、南側は低潮高地(干潮時にのみ海面に姿を現す)とされました。本土から12海里以上離れた低潮高地は領海を持たないので、仮にガベン礁がどこかの領土であっても領海は主張できません。ガベン礁は領有を主張する3カ国いずれからも12海里以上離れています。中国はそれを理解せず、人口島を造れば領土になり、その周囲には領海があると解釈しています。
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図は右クリックで拡大できます。 |
そこで、米海軍としては航行の自由作戦を展開する理由ができるわけです。おそらく、ガベン礁の北西沖合を通過したのでしょう。
この事件が直ちに戦争に発展することはありませんが、ベトナム戦争の発端となったトンキン湾事件でも、現地部隊がやったことをベトナム政府の命令だったと誤解したアメリカが地上部隊の派遣を決断したために拡大化しました。そういう心配は常にあります。
現場では互いに証拠固めのためにビデオ撮影をしたはずですから、米政府は映像を公開して、中国軍の危険な行為をアピールすべきでしょう。
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