米運輸安全委員会もマケインの事故を酷評

2019.8.7


 大事故を調べる任を負う政府機関の、酷評の新しい報告書によれば、訓練不足、疲労困憊と監督の欠如が2017年のシンガポール付近での致命的な米海軍の衝突を招いたと、military.comは報じました。

 国家運輸安全委員会(NTSB)の当局者は、シンガポール海峡付近での駆逐艦ジョン・S・マケイン(John S. McCain)とリベリア船籍の石油タンカー、アルニックMC(Alnic MC)との2017年8月の衝突の一因となった海軍の一連の失敗を酷評しました。

 マケインの喫水線下の船体に28フィートの穴を開けた事故は、その夏、この地域での2件の海軍の致命的な衝突の2回目でした。駆逐艦フィッツジェラルド(Fitzgerald)が日本沖でコンテナ船にぶつかり、7人が死んで1ヶ月足らずで、マケインの隊員10人が衝突で死亡しました。

 「NTSBは海軍が、艦橋オペレーション手順、乗員の訓練、疲労軽減の分野でジョン・S・マケインに効果的な監督を提供するのに失敗したと結論しました」と、月曜日に公表された報告書は述べました。

 艦橋の見張り数名の尋問は、彼らが艦の操舵システムに詳しくないか、誤解していたことを示した、と報告書は述べます。何人かは巡洋艦の資格を持ち、マケインが使ったのと異なる艦橋と航行システムを持ちました。

 「乗員が見張りの基本機能を果たすことが確保されなかった」ために、マケインの艦橋訓練は「不適当」だったと報告書は述べます。

 それは致命的な事故に引き続いた海軍の調査の結論と一致しました。

 「複数の艦橋の見張りは、操舵制御システム、特にステーション間の舵と推力制御の引き渡しについて基本レベルの知識がありませんでした」と、調査は2017年に書きました。

 NTSB当局者は海軍の資格認定プロセスにも疑問を呈しました。

 マケインの艦長、アルフレッド・サンチェス中佐(Cmdr. Alfredo Sanchez)は艦の乗員が適切に訓練を受けて、資格を持つのを確実にする責任を負っていました。しかし、責任はサンチェス中佐に留まりません。

 「艦長の上官は駆逐艦が活動するのに安全で、見張りは資格認定システムが効果的であったことを評価して証明する必要がありました」と報告書は述べます。「ジョン・S・マケイン」の乗員が緊急事態へ有効に対応することへに無能なことは、海軍の評価と資格認定プロセスへ疑問を投げかけます」。

 海軍指揮官は乗員の間の疲労について進行中の懸念に対処することにも失敗しました。マケイン艦上の数人は「著しく疲労」していたと、国家運輸安全委員会は結論しました。乗員が武器の取り扱いとその他の重要な任務に責任を持つため、疲労した海軍のオペレーターは、「もしかすると商用のオペレーター以上に危険です」。

 「通常の日常的任務をこなすために疲労した乗員に頼るのは、不必要なリスクを招きます」と調査員は書きました。

 海軍の国防総省担当報道官、ティム・ピエトラック大尉(Lt. Tim Pietrack)は、軍は洋上の安全を向上するための安全委員会の努力に感謝するとして、海軍はNTSBと同じく、多くの同じ結論に達したと彼は言い、7月の時点で、致命的な衝突に引き続いた評価の結果として、100以上の勧告を実施したと、彼はいいました。

 ピエトラック中尉は安全委員会の7件の勧告のどれが実施されているかは具体的にしませんでしたが、彼は機関の勧告に直接対処したり、包含する軍の結論は、場合によっては、それらを超えると、彼は言いました。

 衝突に先立つ構造的な問題はともかく、安全委員会は事故に直接につながったり、その余波におけるいくつかの失敗を特定しました。それは混雑した水路におけるステーション間の舵と推力制御の引き渡しの決定を含み、事故のリスクを増やしたと、報告書は述べます。

 艦橋チームは状況認識を失ったあと、操舵喪失の緊急手順に従わず、それには近くの船への警告が含まれるはずでした。そうしなかったことが「アルニックMCから衝突を避けるための行動をとるために必要な情報を奪いました」と報告書は述べます。

 乗員が艦を自動識別システムを受信のみにしたとき、マケインは当時の海軍のプロトコルに従っていました。それは艦が他の船へデータを転送していなかったことを意味します。衝突のあと、海軍指揮官は艦が混雑する地域で、より衝突を避けるために、その位置を送信しはじめたことを発表しました。


 ジョン・S・マケインの事故については、過去にも米海軍の調査結果を紹介していて、それと今回の記事は内容に大差はありませんでした。(過去の記事はこちら 

 国家運輸安全委員会も同じ結論に達したということが確認できたわけです。

 平時でも適切な人事が行われず、不適格な隊員が配備されて事故が起きるのですから、大きな戦争になれば、もっと無理をすることになります。ところが、我々はそんなことは想像もしません。戦時にも同じような力を発揮できると信じ込んでいます。そんなところに誤りは潜んでいるはずです。戦争だけでなく大規模災害への対処でも同じことが考えられます。

 

 


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.