国際部隊は大麻栽培を容認

2010.3.26


 もう一つ、アフガニスタンの大麻問題を取り上げます。military.comが、海兵隊が収穫された大麻を破棄し、取引を抑制すれば、大衆の支持を失うという簡単に解決できない問題に取り組んでいると報じています。

 マルジャを攻撃した国際部隊とアフガン軍は、大麻の隠し場所をつかむよう命じられましたが、農民の大麻畑はそのままにするよう命じられていました。作物と農民の生計を破壊することは、長らくタリバンを受け入れてきた大衆の支持を得るという広範な目標を台無しにするでしょう。第6海兵連隊第1大隊A中隊の指揮官、カール・ハベンズ大尉(Capt. Carl Havens)は「我々は彼らにそれ(大麻)を育てさせています。我々が行って、大麻畑を全部破壊したら、彼らはすぐに我々に背を向けるでしょう」と言います。攻撃の前、軍はマルジャの大麻収穫は4,000万ドルの価値があると見積もりました。国連は、全土でタリバンはアヘン取引で年間3億ドルを稼いでいるとみています。アフガン政府は、すぐにでも作物を破棄したいと考えていますが、町がまだ不安定なので自制しているとしています。麻薬担当大臣モハンマド・ザファー(Mohammad Zafar)は「戦いがなくなったら、我々は根絶に取りかかります」と述べ、海兵隊とアフガン軍は治安の確立に集中する必要があり、大麻根絶を任務に加えるのは手に負えないとしました。NATO広報官ジェームズ・アパスレイ(James Appathurai)は「我々は、世界で2番目に貧しい国において、別の収入源を提供することなく、人々の唯一の収入源を取り除く状況にはありません」と述べました。

 海兵隊は作物を破壊しませんが、市場を監視することで、農民がマルジャのどこででも製品を販売するのを難しくするつもりです。小麦や大豆のような合法的な作物に切り替えることを奨励するために、現金、種子、肥料の組み合わせを含む多くの戦略が検討されています。こういう手法はヘルマンド州の別の場所では成功しており、大麻の耕作面積はこの州で昨年33%減少しました。しかし、アフガン政府が最初に治安と統制を確立したところで減少があったのは、すべてタリバンの種子、肥料、支払保証のセットの取引と戦う必要があった地域にありました。2,200人の米軍とアフガン軍が闇市での販売を防ぐために十分統制できるかは不透明です。3週間にわたる戦闘のあとの小康状態は終わったように見え、狙撃手が兵士を待ち伏せするために再び現れました。タリバンの爆弾製造人は重装甲車両よりは徒歩のパトロールを狙うよう戦術を調整しています。収穫はアフガンの伝統的な戦いの季節の始まりと時期を同じくします。タリバンは歴史的に冬の間に再編成し、春と夏に攻勢を行うために戻ってきます。NATO当局者は、遅れているものの、軍はパトロールを行って薬物の手入れを行い、非合法のビジネスを減らしていると言います。農民は誰も本当の代替案を提供していないと心配しています。マルジャの農民アブドゥル・ガーニー(Abdul Ghani)は、3エーカー(1.2ヘクタール)の農地を持ち、2エーカーで小麦、1エーカーで大麻を栽培していますが、大部分のお金を生むのは大麻の方だと言います。「土地を耕し、肥料を撒く、こうしたことには金がかかります。小麦は費用すらまかなえません。私に他の収入があれば、私は大麻を作らないでしょう。労働者として働くとか、お金持ちのところの小作人になったりするでしょう」。マルジャの行政チーフ、アブドゥル・ザヒル(Abdul Zahir)は、合法的な作物が同じ利益を生むとは期待していないけども、農民がタリバンが提供するのよりも良好な統治と治安と引き替えに、より少ない金を受け入れることを望むと言いました(ザヒルについてはこちらを参照)。彼は数ヶ月かけて農民を転作するように説得することを望んでいます。米軍は用水路の清掃、井戸掘り、歩道橋の建設のために大勢の男を雇うところです。すでに、米軍は賠償金の支払いと用水路の清掃のような即効性のある計画のために25万ドル以上を支払いました。

 重要な記事なので、できるだけ多くの部分を訳しました。タリバンとは違う方法で大麻問題を根絶しようとする国際部隊とアフガン政府の取り組みが分かります。

 大麻を刈り取るのは、2009年2月にもやったことがあります(前の記事はこちら)。この時、タリバンは猛烈な妨害を行いました。マルジャ戦はまだ完全に終息しておらず、こうした抵抗が予想される刈り取りは行わないのでしょう。また、大麻の栽培を禁止するのは、タリバンでもできなかったことであり、いますぐに全面的に禁止するのは難しいという理由もあるでしょう。タリバンは農民の収入がなくなると彼らの支持が減ることを悟ると、栽培を再開させました。アフガンでは11〜12月に大麻の種をまいて、4〜5月に収穫します。ザヒル行政チーフがやると言っているのは、補償金を払うから、大麻を刈り取らせてくれと農民に頼むことでしょう。それによって、春の収穫物がタリバンや闇市に流れるのを防ぎ、今後の農作については、合法的な作物へ転作してもらうというやり方です。米州軍で農業技術を持つ隊員がチームを組んで、アフガンの農民に技術指導を行い、成果をあげています。これらを組み合わせて大衆の支持を失わない範囲で行いたいわけです。今年、この方法がうまくいくかどうかについて、結論が出るはずです。それこそが、マルジャ戦を行った理由であり、良い結果が出ることを望むしかありません。


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.