陸軍病院は仮病の患者でいっぱい?
2011.2.9
追加 2011.2.10 16:40
military.comが米陸軍の傷病兵治療の不備に関する記事を報じました。ここではthe Tribune-Reviewに掲載された元記事を紹介します。
国防総省の内部調査によれば、特別な陸軍医療部隊は現在、犯罪者、麻薬常用者、仮病を使う者、精神的・肉体的に衰弱した兵士で溢れています。
国防総省の負傷兵治療・転換政策局(the Office of Wounded Warrior Care and Transition Policy)が2009年と2010年に編集した報告書は、陸軍の38ヶ所の転換部隊は、イラクとアフガニスタン戦の間に採用基準を引き下げなかったなら軍隊に入らなかった兵士で溢れています。
報告書は特別医療部隊の兵士の士気低迷が、部分的には仮病を使う不満を持った者、何年もそこにいる古参兵のために指数関数的に増え、海外で怪我をした者たちよりも多くなったと指摘します。
「彼らの多くはそもそも採用されるべきではなかった人たちです」と、国内とヨーロッパの兵士転換部隊(Warrior Transition unit)へ調査官を派遣した元防衛次官補ノエル・コッチ(Noel Koch)は言いました。「出世第一主義や何かその他の理由、無関係でいるための、軍隊の一部が故意に見て見ぬ振りをしているようです」。
ホワイトハウスは国防総省の特別医療部隊を回復することを選び、コッチ氏は国防総省にこれらとその他の調査結果を持ってきた後で、昨年4月に辞任を調整されたと言います。
当局はコメントを辞退しました。
人手不足に対処するため、コッチ氏は、2004年にイラクで武装勢力が爆発し、国防総省が慢性的な採用不振にみまわれた時、国防総省が手を抜き始めたと疑っています。
当時、陸軍は採用基準を引き下げ、次第により多くの倫理・健康上の免責を、以前なら兵役に不合格とされた条件である、薬物乱用、犯罪、健康上の問題が認められた志願兵に与えました。
2004年、陸軍に入隊した志願者の約12%には、こうした特別な医療・法的な免責が与えられました。陸軍の記録によると、2008年までに、免責の数は2倍以上の約26%になりました。
陸軍の予防医学部の報告書によると、2009年に陸軍は倫理上の免責を劇的に削減しましたが、未だに全志願者の4分の1にあたる18,000人の志願者を、すでに存在した医学上の問題と共に訓練基地に送っています。
高血圧、アルコール、コカイン乱用、人格障害、頭部の負傷、発作、心臓弁膜症、緑内障、その他の疾患のために免責を求める半数以上の志願者は、陸軍に入隊できました。全体で、2004〜2010年に医療上の免責を求めた志願者の約65%は陸軍に入隊しました。これらの兵士の8,200人は、後にの神経や人格の障害、精神病、薬物中毒の治療を受けました。
コッチ氏は、人員の目標を満たすために特別な免責で入隊したこれら兵士の多くは、陸軍の兵士転換部隊に行き着いたと確信しています。しかし、問題は陸軍の医官や徴募官が見逃した条件を持って訓練基地へ行く兵士によって拡大されました。
2009年後半、コッチ氏のチームは、ジョージア州のフォート・ベニング基地で医学的な治療を受けている人々の約3分の1が新兵訓練所から成功することができなかった新兵であるとの情報を得ました。
内部報告によると、多くの志願者は採用基準を満たすために薬を飲むのを止めたり、陸軍兵士転換部隊のかなりの数の患者は、採用過程で報告されなかった、すでに存在した行動保険学上や慢性的な健康問題を負っていました。
同紙がこれらの調査結果を、2005〜2009年まで陸軍の採用を監督した三つ星の将官、トーマス・P・ボステック中将(Lt. Gen. Thomas P. Bostick)に見せたところ、彼は既存のコンディションの兵士が医療用の兵舎を膨れ上がらせていることを結び付ける報告書について知らないと言いました。
ボステック中将は、連邦法が不合格になりかねない精神的な問題について、志願者を厳しく尋問することを抑圧していると徴募官を弁護しながらも、徴募官はなにが起きているかを判断する能力、経歴、経験を持っていると強調しました。
国防総省が後年の疾患のために除隊になる、既存の健康状態を持つ兵士の人数を数えるのは簡単ですが、仮病を使う者や、任務を忌避したり、陸軍や国防総省の福利厚生を得るために、状態を誇張する者をアナリストが見積もるのは困難です。
陸軍は仮病を真剣に扱います。任務を避けたり、福利厚生を得るために病気を装ったり、自傷することは、統一軍紀法典の下で最高禁固10年になる重罪です。
内部報告によると、第1歩兵師団の拠点、カンザス州のフォート・ライリー基地では、基地の兵士転換部隊の基幹分隊指揮官は、合理的な傷病者1人につき、仮病を使う者が3人いると見積もります。しかし、フォート・ベニング基地では、スタッフは10%に近い数字をあげました。
ルイス・マッコード基地で患者の権利を守るために陸軍医療部に雇われた元民間オンブズマン、アニー・チャンペニー(Anne Champney)は、過去2年間で「非常に、非常に少ない」仮病を使う者しか見つかっておらず、「数名の兵士だけ」だと言いました。
兵士の採用基準を引き下げた話は、当サイトで過去に紹介しました。(記事1・2)
人により仮病を使う者の数が違う点が気になるものの、ブッシュ政権期に行われた無理が今になって問題として浮上したのだと考えます。それも、予想以上の問題です。
兵士の採用基準が引き下げられた時に考えたのは、戦地での軍事活動の質の低下でした。実際、スティーブン・グリーン上等兵が主犯となって引き超されたイラク人少女の強姦と一家皆殺し事件は、これに原因があった可能性があります。グリーン上等兵は事件後に人格障害を理由に除隊させられ、前記の事件で逮捕されたときは民間の法廷で裁かれました。もし、グリーン上等兵が入隊前から人格障害で、米軍の採用基準引き下げにより採用されたのなら、陸軍の責任は重大です。
似たようなことを、アメリカはイラクでも行いました。新生イラク軍の兵士を訓練しても合格点に達する者が少ないので、米軍は評価の基準を下げて、無理に訓練兵を部隊に配備したのです。
なぜこんなことが行われるかというと、行為と結果の因果関係を証明しにくく、仮に問題が起きたとしても、担当者の責任にはならないためです。軍隊でも、内心は責任から逃れたいのは誰しも同じです。こうして、時としてとんでもない誤った判断がなされることがあるのです。「国を守る責任」という言葉は疑問を持たれることが少ないのですが、国家のような巨大な組織体は、それ自体が無責任な存在になりかねないのです。人々は国の存続のためには何でも許されると考え、その通りに行動します。よって、軍隊においては、時として酷く問題のある判断が通ってしまうのです。
余計な人たちを採用し、転換部隊に送り込むことで、無駄な医療費が費やされ、これは国防費の負担となります。コッチ氏の主張はさらに詳しく調査されるべきです。
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