アフガン「殺人チーム」で7番目の有罪判決

2011.7.12


 military.comによれば、アフガニスタンで民間人を殺害し、戦友に対する暴行で起訴された「殺人チーム」事件で、ダレン・ジョーンズ3等軍曹(Sgt. Darren Jones)に金曜日、有罪判決が申し渡されました。(過去の記事はこちら 

 ジョーンズ3等軍曹は戦友のジャスティン・ストナー上等兵(Pfc. Justin Stoner・30歳)に対する暴行では有罪でしたが、より重い、昨年派遣中にアフガン人を傷つけようと計画した罪では無罪となり、禁固7ヶ月と2等兵への降格を命じられました。不行跡除隊(bad-conduct discharge: BCD)は免れました。ジョーンズ3等軍曹は陪審員長が評決を述べる間に泣き出し、判決申し渡しの前に陪審員に、アフガンでの自分の行いを後悔し、陸軍に留まりたいと言いました。「本当に、本当に申し訳ありませんでした」「機会があれば、別に(ストーナーに)謝罪したいと思います。派遣中の私の行動は指揮官の行動ではありませんでした」。

 ジョーンズ3等軍曹と彼の家族は陪審員の決定に安心したようでした。アフガン人殺害と2010年3月のパトロール中の非戦闘員への発砲で有罪になれば、彼は合計で禁固22年になるところでした。懲戒除隊を免れたので、「少なくとも彼は希望を持って刑を終え、退役軍人の恩典を得て、進学し、重罪の有罪判決に悩まされることはありません」と彼の弁護士、ケビン・マクダーマット(Kevin McDermott)は言いました。

 5人の軍人の陪審員はジョーンズ3等軍曹を陸軍の調査を妨害しようとした件では無罪としました。陪審員は大佐2人、部隊最先任上級曹長2人、上級曹長2人で構成されました。ジョーンズ3等軍曹は派遣中に不正行為と戦争犯罪で起訴された12人の兵士の1人です。ジョーンズの裁判は「殺人チーム」の調査では7番目の有罪判決で、陪審裁判は最初です。

 検察官たちはジョーンズ3等軍曹は民間人を撃つことでアフガンでのアメリカの戦争を台無しにしたと主張しました。彼らは彼が若い兵士が彼らの基地の薬物使用で不満を言った時にストーナーを守るために介入しなかったのは、軍曹として失格だと言いました。ジョーンズはストーナーを殴った6人の兵士に加わりました。「これは下士官たちが支持することのすべてを蝕み、彼らの指揮系統が行動において彼らに信頼を置くことのすべてを蝕みます」と検察官、ダン・メゾン大尉(Capt. Dan Mazzone)は言いました。

 評決は起訴側の何人かの目撃者を陪審員が完全に信じなかったことを示しました。たとえば、ジェレミー・モルロック2等兵(Pvt. Jeremy Morlock・当時は伍長)は陪審団に、ジョーンズ3等軍曹が非戦闘員の殺害の相談に参加し、証拠品を仕掛けたと言いました。モルロックは殺人を実行した件で有罪を認め、彼の共同被告人に不利な証言をすることに同意しました。モルロックはジョーンズ3等軍曹と、彼が2010年3月に非武装のアフガン人を撃ったことを認めた会話をしたとも言いました。陪審団はモルロックの供述に関連する罪でジョーンズ3等軍曹を無罪としました。マクダーモット弁護士は「モルロック1人では、本当に重要な件を何も有罪にすることはありません」と言いました。

 ジョーンズ3等軍曹の小隊の仲間の何人かが金曜日の法廷に参加しました。2人はモルロック2等兵が彼らに対する重要な証言をする軍事裁判を待っています。共同被告人、デビッド・ブラム2等軍曹(Staff Sgt. David Bram)とアンドリュー・ホームズ上等兵(Pfc. Andrew Holmes)は、刑の宣告の後でジョーンズを抱きしめました。「つまるところ、それは過度の環境に置かれた脅えた子供たちでした」「正しいアドバイスとガイダンスで、抗した子供たちは許されるべきです」とマクダーモット弁護士は言いました。


 この事件は、米兵がアフガン人を射殺し、それが発覚しそうになると戦友を暴行して口止めしたという陰惨な内容です。事件の内容は過去に紹介しているので、以前の記事をご覧下さい。

 こうした事件は罪の軽い者から裁判を行うので、ジョーンズ3等軍曹は比較的軽い方だということができます。なので、殺人罪が認められなかったこともあり、罪は軽くて済んだわけです。

 管理的や懲罰的な除隊は3種類あります。それらは処分が重たい順に、不名誉除隊(Dishonorable Discharge: DD)、懲戒除隊(Bad Conduct Discharge: BCD)、無名誉除隊(Other Than Honorable Discharge: OTH)です。OTHはほとんど日本語化されることがなく、とりあえず「無名誉除隊」としましたが、「非名誉除隊」でもよさそうです。

 無名誉除隊は管理的な除隊、懲罰的な除隊は懲戒除隊と無名誉除隊です。

 不名誉除隊は軍のほとんどの恩典を失い、恩給ももらえず、ほとんどの州で市民権に付随するものが喪失します。懲戒除は恩給はもらえませんが、傷病の補償金は認められます。

 懲戒除隊が認められなかったので、彼は首の皮一枚残して軍に留まれたわけです。今後、真面目に任期を勤め上げれば、恩給は認められるわけです。

 陪審員5人中3人が下士官なのは、将校は軍事裁判で降格や懲戒除隊と不名誉除隊を受けないことから、公正を期するために下士官の人数を過半数にするためでしょう。もちろん、上級裁判所が判決をチェックし、不当な処分ならば除隊を取り消せます。

 ジョーンズの裁判で、ブラムとホームズの裁判の結果も予測しやすくなりました。モルロックの証言が信用ならないなら、彼らもそれほど重たい刑罰は受けないでしょう。

 マクダーモット弁護士が被告らを「子供」と呼ぶのは理由は認められますが、30歳にもなったら、一定の責任を負うべきです。私自身も30歳の頃の自分など、今から見たら無知にも等しいと言えますが、殺人に関連する行為に加担したいとは思わなかったでしょう。若者はほっておくと、時としてとんでもないことに熱中します。ゲーム感覚で殺人をしたり、自分たちの任務を勘違いして、戦死者の写真を収集して、交換して遊んだりするのです。軍は単に戦果を上げるためだけに兵士を訓練するのではなく、異常な行為を早くに察知するような態勢を持つべきです。



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