米議会からビン・ラディン暗殺映画に横槍
military.comによれば、米下院国土安全保障委員会の委員長、ピーター・キング下院議員(Rep. Peter King)は水曜日、制作が決まっているオサマ・ビン・ラディン殺害の映画について機密情報が漏れていないか調査を求めました。
キング下院議員は、5月にパキスタンでビン・ラディンを殺害した海軍シールズの急襲について、すでにあまりにも多くの情報が漏れ、国防総省当局者が任務の詳細について話すことを警告したと言いました。彼はCIAと国防総省の監察官に、秘密の特殊部隊員への接触をハリウッドに与えることについて、オバマ政権でどのような協議があったかを究明するよう要請しました。
映画は2009年のアカデミー賞受賞作「ハート・ロッカー」のキャスリン・ビグロー(Kathryn Bigelow)が監督し、脚本家はマーク・ボール(Mark Boal)になる予定です。
ホワイトハウスはキング下院議員の要請を冷笑を返し、映画制作者はいかなる機密情報も提供されないと言いました。報道官、ジェイ・カーニー(Jay Carney)は記者に「この部屋にいる人を含め、大統領が関連する記事、本、ドキュメンタリーや映画で働く人たちが政権当局者に話を求める時、私たちは事実が正しいことを確認するために最善を尽くします。それはメディアへの新しいアプローチではありません」「私たちは機密情報を話しません。そして、私は、私たちが絶え間ないテロリズムの脅威に直面する時、下院国土安全保障委員会は映画よりもより重要な話題を持つことを望みます」。彼は急襲について提供された情報はオバマ大統領の役割に集中し、それはこの話題について書くために誰もが与えられたのと同じ情報だと言いました。
キング下院議員は彼のスタッフが、映画制作者とのいかなる協力にも当惑するCIA当局者と話したと言いました。彼が監察官に調査を依頼したことは次のとおりです。
政権でハリウッドの重鎮に、急襲について話すために秘密の特主部隊員とCIA職員に接触を提供することの適否に関するすべての協議。
特殊作戦の戦術、テクニック、プロシジャー、情報源とその手法が明らかになるかを公開の前に評価するために、軍とCIAにフィルムのコピーが提出されるかどうか。
映画制作者が特殊部隊員とCIA職員との会議に参加したかどうかと、こうした参加のすべてが要員の秘匿を維持する責務とのバランスが取れているかどうか。
映画はソニー・ピクチャーズ・エンターテイメントが来年秋、2012年11月の選挙の前に公開する予定です。
国防総省広報官、デーブ・ラパン海兵大佐(Marine Col. Dave Lapan)は記者に「この映画プロジェクトは脚本制作段階にあるだけで、国防総省は脚本の調査の支援を提供しています。それは我々が名声のある映画制作者に通例やっていることです」「脚本の評価、機材の要請、国防総省のその他の支援があるまで、国防総省の支援のための正式な取り決めはありません」。
ビグローとボールは声明の中で次のように言いました。「我々の今度の映画プロジェクトは、十年越しのビン・ラディン追跡が、国防総省とCIAによる協調的な戦略と遂行だけでなく、何年にもわたって進行し、クリントン、ブッシュ、オバマを含む3つの政権が総力を挙げたことについてのものです」「特に、世界の最重要手配犯を見つけるという危険な仕事は、政治的な立場を問わず、より大きな利益のために命を賭けた軍と諜報界の個人によって実行されました。これはアメリカの勝利であり、英雄的であり非政党的であり、そうでなければ我々の作品がこの大勝利を描写しようと提案する理由はありません」。
ラパン大佐が指摘するように、この作品は現在、脚本の制作中です。「Kill Bin Laden」というタイトルだと言われていますが、映画のデーターベース、imdb.comは「Untitled International Thriller(タイトル未定の国際スリラー作品)」と表記しています(該当ページはこちら)。「ハート・ロッカー」で、米陸軍は俳優に爆弾処理の基本をレクチャーするだけに留め、撮影には協力しませんでした。劇中で登場人物の軍人が不法行為を何度も行うためだと考えられます。
キング下院議員の懸念ははっきり言って無用です。劇映画は普通、機密情報に基づいて制作されません。「ハート・ロッカー」はいかにも本当らしく見えましたが、これはプレミア上映を観た陸軍公報担当のグレゴリ・ビショップ中佐が懸念したことです。「私が問題だと思うことは、人々がこれを見て、リアルだと考えることです。これはリアルに見えますから。彼らは知識の足りないまま、兵士がほとんど正しい方法で軍服を着ていて、彼らが兵士のように見え、イラクのように見えると考えます」とビショップ中佐は言いました(関連記事はこちら)。
リアルに見える「ハート・ロッカー」も、事実をデフォルメして表現しているのです。事実をそのまま描くだけならドキュメンタリー作品になるだけで、現代の劇映画はその先へ進んでいます。このことは、「ハート・ロッカー」の解説で指摘しました(関連記事はこちら)。十年越しの追跡で、関係者は何度も入れ替わったはずですが、劇映画ではそれを同一人物の行為に置き換えて、観客に理解しやすくするといった工夫がなされるものです。
CIAが情報源に迷惑がかかるような情報を提供するはずはなく、特殊部隊の戦術にしても、一般的なところは、映画や書籍ですでに知られているところです。
また、「ハート・ロッカー」はイラク侵攻を皮肉っぽく描写しながらも、映画制作者は表向き「兵士を誇りに思う」と声明しています。今回の作品でも、同じように兵を讃えながらも、批判精神を発揮する可能性が十分にあります。
キング下院議員が心配するように、機密情報が劇映画から漏れることは起こらないわけです。
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