軍人はフェイスブックで発言できるか?

2012.3.9


 military.comによれば、米軍人がフェイスブックを開設して、政治的な意見を公表することと軍規が衝突しています。

 海兵隊のゲーリー・スタイン軍曹(Marine Sgt. Gary Stein)は、軍人に表現の自由を行使することを奨励するために、初めて「Armed Forces Tea Party Patriots」という名前のフェイスブックを始めました。それから、彼は最高司令官、バラク・オバマ大統領の命令に従わないと断言しました。スタイン軍曹があとで「非合法の命令」には従わないと声明を軟化させたものの、軍の観測者は彼はやり過ぎたかも知れないと言います。海兵隊は現在、彼が制服を着て政治的声明をすることを禁止する軍規に違反し、兵士が社会的メディアで何が言えて、何が言えないかのガイドラインを破ったかどうかを調査しています。スタイン軍曹は彼の発言は憲法上保護されると言いました。

 兵士は常に非公式に意見を口にできますが、スタインの事例は軍人が軍のイメージを国の内外で傷つけかねない個人情報、ビデオ映像、写真をハイテク技術のサービスに投稿して意見を世界に広めるという潜在力を明らかにします。「表現の自由は人々が軍隊に入ることで基本的な権利の一部を放棄する一つの分野であることは、長い時間をかけてよく確立されてきたことだと、私は思います」と、元海軍将校で、ロスアンゼルスのロヨラ法学校(Loyola Law School)教授、デビッド・グレイザー(David Glazier)は言いました。「優良な命令と規律は、軍が指揮系統への敬意を維持することを必要とします」「それは最高指揮官までを含めて、指揮系統の中にある上官の批判を口にすることを禁止することを含みます」。

 国防総省の命令によれば、軍服を着用した隊員は政治的なクラブを後援したり、賛成反対を問わず政治的結社、候補者あるいは議題へ意見を述べるテレビやラジオの番組やグループ討論に参加したり、政治的活動を促進するすべてのイベントで話ができません。将校も国防長官や大統領を含めた上官に対して軽蔑的な言葉を使うことを許されません。

 1月に迷彩服を着た陸軍予備役兵がアイオワ州の共和党大統領候補者、テキサス州議員ロン・ポール(Ron Paul)の集会で発言してトラブルになりました。(関連記事はこちら

 2010年にフェイスブックを開設した後、オバマ大統領の医療改善を批判して、スタインは最初にキャンプ・ペンデルトン基地の上官から注意を受けました。スタインは彼が上官の要請で規則を見直す間、ページを閉鎖すると申し出ました。彼が違反していないと考えており、名称を「Armed Forces Tea Party」と縮めてページを再開しました。先週、大統領の非合法の命令には従わないというメッセージを投稿した後、彼は上官に政府のコンピュータ上でソーシャルメディアを使うことはできないと言われたと言いました。スタインは彼の声明は、アフガニスタンでのコーラン焼却に関してNATO軍が米軍兵士に試練にさらされることを許していることに関するオンライン上の議論の一部だと言いました。文脈の中で、彼は米国民を拘留する、彼らを武装解除する、彼が憲法上の権利だと信じることすべてをすることを含めた命令が含まれていたら、大統領の命令に従わないと述べていました。別の海兵隊員がこの声明について司令部に警告を出したと、スタインは言いました。スタインは大統領の職を尊重しますが、オバマの政策に反対だと言いました。彼は自由に発言する権利を持っていると言いました。「私が海兵隊員であることは私が自由に発言しないことや、みんなと同じように大統領やその他の公人に関する個人的な見解を言えないことを意味しません」「憲法は他の何者にも勝ります」。スタインは、軍人が憲法と政府内で何が起きているかを熟知していることは有益だと言いました。「我々が何のために戦っていることを知っていれば、我々はより激しく戦います」。

 海兵隊は、スタインが公的な立場で述べている印象を与えない限り、彼は個人的な見解を述べることが許されていると言いました。海兵隊広報官、マイケル・アーミステッド少佐(Maj. Michael Armistead)は、海兵隊がこの一線を越えていないことを確実にするために吟味していると言いました。「現時点で、彼は彼のページの中の声明を引き下げるよう要請されていません」。

 スタインは彼のフェイスブックのページに礼装で登場し、自身を「保守派のブロガー、スピーカー、『the Armed Forces Tea Party』の設置者。現役で軍歴8年の古参海兵隊員」と描写しています。

 スタインのページのファン、ジェレット・ライト海兵軍曹(Marine Sgt. Jerret Wright)は、オバマ大統領の命令に従わないと述べた最新のメッセージで、スタインが恐らく限界ギリギリにあるけども、見解を表明する彼の大胆さはしばしば沈黙するコミュニティでは爽快だったと言いました。「人々は我々がつないだり切ったりできるスイッチがあるゾンビで、我々が命令に従い、それ以外のことはしないと考えます」とライトは言いました。

 軍の観測者はそんなに単純ではないと言います。彼らは最高指揮官を酷評することは不作法だと言います。専門家も彼の投稿は政治的な見解を持つ彼の個人的な立場に関連づけられるように見えると言います。彼らは、国防総省の方針が部隊を分裂させ、任務を遂行するために必要な強力に機能する人間関係を混乱しかねない政治的、宗教的な議論を防ぐ際に必要だとも指摘すると、グレイザー教授は言いました。「世界の軍隊には、民間の法の支配に貢献しないことを示す政治的出来事に強く関与する実に多くの実例があります」と彼は言いました。


 スタイン軍曹は表現の自由と内心の自由をはき違えていると、私は考えます。なんにせよ、個人が内心で考えることは制限できません。しかし、武装組織である軍隊の一員が、社会に与える影響を考慮して、発言する権利を一部制限されることは認められるというのが一般的な見解なのです。

 発言の内容で言えば、「米国民を拘留する、彼らを武装解除する、彼が憲法上の権利だと信じることすべてをすることを含めた命令が含まれていたら」と書いてある点が気になります。

 「米国民を拘留する、彼らを武装解除する」の部分は、一般大衆向けに、誰も否定できない部分をあげたようにしか見えません。これに反対する米国民はいません。米軍は警察活動をしないのが伝統ですし、武装する権利は誰もが持っていると、アメリカでは広く信じられています。だから、スタイン軍曹は予防線を張っているように見えます。

 憲法に関する議論が複雑なことは誰の目にも明らかです。法の根本的な部分を定義する憲法は、その解釈自体が様々であり、多くは判例に従うとはいえ、新解釈が出る場合もあるのです。それをスタイン軍曹が判断するというのは、話に無理がありすぎると思います。

 もちろん、命令違反で逮捕されても、彼が意見を変えず、法廷で最後まで戦うというのなら、それは個人の判断として尊重されるべきであり、聞くべき内容を持っていると思います。そんなことになれば、当サイトで取り上げます。

 以前にテレビ番組で、ブッシュ政権のイラク侵攻についての意見を求められた元米陸軍の中堅将校が、「答えは言わないで起きますが、その兵数は論外に少ないと思います」とだけ答え、退役後も軍規を尊重する姿を見たことがあります。

 軍人は軍事技術を保持することで国に貢献します。だから、意見を言うべきは軍事的な面について、大統領に助言する場合なのです。だから、軍人の反逆精神は明らかに損害を受けるような軍事行動を命じられた時に発揮されるべきです。その点では、イラク侵攻が計画された時に、それを発揮して欲しかったと思います。往々にして、戦争を始めようとする時の軍人の抵抗は弱く、戦争を終わらせようとする時の方が強いもので、これこそ改善して欲しいと、私は考えています。



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