自衛隊南スーダン派遣隊が撤退へ
南スーダンの戦況をまとめようと思っていたところに、自衛隊から韓国軍への弾薬譲渡という出来事があり、武器三原則違反と日本と韓国両政府の主張が食い違うという、奇妙な状況が起き、まとめるのにさらに時間がかかりそうです。
私は最初から南スーダンへの自衛隊派遣には懐疑的でした。南スーダン国内で内戦が起きており、まだ情勢が分からない場所へ自衛隊を派遣する意味が分かりませんでした。その背後にはスーダンがいるともいわれます。活動しても、その成果が出るとは限らず、国際貢献になるとは考えにくかったからです。情勢が悪化すれば撤退するしかないし、成果が帳消しになる可能性もありました。(過去の記事はこちら)
戦況から見て、自衛隊の撤退は当然と思います。反政府派が迫っている、韓国軍が駐留するボルは首都ジュバから直線距離で約150km足らずです。白ナイル川沿いの幹線道路がボルからジュバへ走っており、戦闘はこの付近で行われることになります。政府軍が総崩れになれば、首都制圧はあっという間かも知れません。しかし、昨日の段階では、自衛隊の活動は継続の方針となっていたはずで、一夜にして撤退に切り替わった理由が分かりません。NHKは「首都ジュバの情勢を巡って、陸上自衛隊の部隊の隊長は24日テレビ電話を通じて、小野寺防衛大臣に対し『人々の生活も平常に戻ってきており、沈静化に向かっている。問題なく任務を遂行している』と報告しました。」と報じています。150km先が弾薬を提供しないといけないほどの緊張地帯なのに、首都は安全だという判断は、軍事常識から言っても無理があります。特に自衛隊の基地がある空港は、ジュバの北端にあり、その北側は防衛用の地形のない平地ばかりです。すでに撤退の準備を始めていないとおかしい段階です。
「原発がないと日本経済が破綻する」という類のセリフと同じで、弾薬提供をしたいところでは「人道的危機」「緊急の必要」を叫ぶのに、撤退したくないところは「生活は平常」「沈静化」と言って誤魔化すのが、日本政府の矛盾したところです。そして、それを批判しないマスコミの体たらくも話になりません。
撤退は今回の弾薬譲渡の幕引きのつもりかも知れませせんが、どのみち、撤退する必要があったのです。
ちなみに、ソマリアの海賊が2008年に乗っ取った船の中に、スーダン行きの対空兵器があった可能性があることを、当サイトは紹介しています(過去の記事はこちら)。そもそも海賊の主張が正しいのかは疑問ですが、海賊が船を乗っ取ったことで、対空兵器がスーダンに渡らなかったのか、すでにスーダンに到着した対空兵器があったのか。その対空兵器が現在、誰の手にあるのかは不明です。南スーダン領域内にある場合、自衛隊が航空機で撤退する場合の障害になる可能性もあります。
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